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第20話「すみません! 防戦で精一杯です!」

ロジェは、


「宜しくお願い致します」


と言い、深く一礼すると、ゆっくりとアルフォンスへ向け、歩みはじめた。


そこへ、


「君、これを使うように」


別の職員が歩み寄り、持っていた練習用雷撃剣を渡してくれた。


「ありがとうございます」


礼を述べ、お辞儀をしたロジェは数回、雷撃剣を振ってみた。

そこそこの重さはあるが、ロジェにはひどく軽く感じられた。


一方、剣を振るアルフォンス試験官は探るような眼差しでロジェを見つめ、

口元にはシニカルな笑みが浮かんでいた。


何か、嫌な雰囲気だ。


今どきの若い奴はという心の波動が、アルフォンス試験官から発せられていた。


多分、先ほどの志願者の態度が悪かったからだろう。

同じくらいの年齢の少年という事で、いっしょくたにされているらしい。


とばっちりか?


まあ、仕方がない。

俺には関係がないし、自分のやり方で、礼儀正しく振る舞い、作戦通り戦うだけだ。


ロジェとアルフォンス試験官は、約5m離れ、対峙した。


審判役の試験官が、声を発する。


「礼!」


互いに一礼したロジェとアルフォンソ試験官。

顔を上げたふたり、一瞬の沈黙。


………………………………………………………………………………


「始めっ!!」


審判役の試験官が再び発した鋭い声が試合開始を告げた。


試合開始と同時に、ロジェはダッシュ!

とは言っても能力を滅茶苦茶微小に抑え、

最大速度の1万分の1程度の速度――時速40㎞程度で駆け、

アルフォンソ試験官へ肉薄した。


しかし、人間の最高走度に近い走りで肉薄したロジェに、

アルフォンソ試験官はびっくり。

思わず慌ててスキが出来た。


「たあっ!」


ロジェの気合一閃!


びしっ!


見事にアルフォンソ試験官の胴を打った。


びりびりびりっ!


「うわち!」


悲鳴を上げるアルフォンソ試験官。

さすがに剣は、手放さない。


しかし、ぱっと、数字が変わり、魔導掲示板のポイントは1対0となった。


「おお、やるじゃないか! ロジェ君のポイントリードだ」


審判役の試験官が感嘆、そしてにやりと笑い、


「ははは、油断したな、アルフォンソ」


と言った。


「そ、そうだ! こいつのスピードにびっくりしただけだ!」


とアルフォンソ試験官は強がって返し、審判役の試験官へ尋ねる。


「おい、試験は一時中断だ、ちょっと、こいつのプロフを教えてくれ」


ランク判定試験はとりあえず、ストップらしい。

ヒットアンドアウエイ戦法で、剣を打ち込んでから、

すぐ離れていたロジェは剣をゆっくりと下げた。


そんなロジェを指さし、審判役の試験官は言う。


「ああ、彼はロジェ・アルノー君、15歳。生活魔法を使える子で、『戦うシーフ職』が希望だそうだ」


「むう、15歳のロジェ・アルノーか。戦うシーフ職が希望……成る程な」


アルフォンソ試験官は、納得したのか、うんうんと頷き、


「ロジェ! 確かにお前のスピードは凄い、俊敏性も中々でシーフ職を目指すだけはある。だが戦うのは全くダメ。剣の打ち込みはまるで素人だぞ。踏み込みが甘くて、膂力も無さすぎる。もし今の一撃がクリティカルヒットならば、10ポイント満点で負けどころか、俺は致命傷を負っていた」


憎々し気な表情で、吐き捨てるように言い切った。


「……………………………………………………」


対して、ロジェは無言。

大人しく聞いていた。


……アルフォンソ試験官の指摘は、至極当然、その通りである。

敢えてわざと手加減をしたのだから。


無言のロジェが、指摘にショックを受けていると思ったのだろうか。


「さあ、試験の再開だ。おいロジェ・アルノー、今度は絶対に油断しないぞ」


「……………………………………………………」


「どんどん打ち込んで来ると良い。但し、俺も反撃させて貰う、厳しい現実をしっかりと理解させてやるからな」


アルフォンソ試験官は、ロジェをぎっと睨み、剣を構えたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


アルフォンソが剣を構えたのを見て、ロジェもゆっくりと剣を構え直す。


「改めて開始!」


審判役の試験官の声で、試合は再開される。


「さあ! ロジェ! 来い!」


そんなアルフォンソ試験官へ、審判役の試験官がなだめる。


「おいおい、アルフォンソ。15歳の素人に、あまり本気になるなよ」


「分かっているさ!」


アルフォンソ試験官は相当な負けず嫌いらしい。

舐めていた15歳の素人少年に打ち込まれて、

プライドを傷つけられ、いらついてもいた。


気持ちは分かるが、正直大人げない人だと思う。


しかし、冷静さを失っているそんな状態なら、ロジェは更につけこみやすい。


実力を隠しながら、作戦を続行するのには絶好の機会だから。


ロジェは再びダッシュし、アルフォンソ試験官へ打ち込む。


「たあっ!」


「甘いっ!」


ロジェの剣さばきを見て、見切ったと思ったのだろう。

アルフォンソ試験官は一撃を簡単に(かわ)し、

カウンターで反撃を仕掛けて来る。


しかし、ロジェの動体視力がアルフォンソ試験官の剣の動きをしっかり捉えていたのと、敢えて深い踏み込みをしていない為、後方に飛び退り、あっさりと躱した。


「うお! 避けやがった! やはり俊敏さはトップレベルだな!」


叫びながら、アルフォンソ試験官は更に攻撃を仕掛けて来た。


しかし、ロジェは防戦一辺倒で躱す。


「おい! 避けてばかりじゃ、いつまでたっても敵は倒せんぞ!」


「すみません! 防戦で精一杯です!」


やっと口を開いたロジェの言葉に満足したのか、


「そうだろ! そうだろ! 未熟者め!」


と言いながら、アルフォンソ試験官はかさにかかって攻撃を続けて来た。


しかし、相変わらずロジェは防戦一辺倒。

攻撃を繰り出す際の癖も把握しているから、

アルフォンソ試験官の嵐のような攻撃をかすらせもしない。


……そんなこう着状態がしばし続いたが、ここで時間切れ。


ぶ~!!!


フィールドに響き渡る魔導ブザーが審判役の試験官によって鳴らされ、

結局、先取した1ポイントで、ロジェが勝利を収めたのである。

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