第2話「覚悟? 全然あるよ! 俺はこれ以上道具として、都合の良いように使われるのはまっぴらなんだ」
……現在、ラウルとケルベロスは、大陸北方の地、魔境の果てにある魔王城に居た。
ふたりは、魔王討伐後の無人となった魔王城の内部を探索する。
パピヨン王とマルスリーヌ王女には、魔王討伐の後、
戦利品の確保を命じられているからだ。
やがてラウルとケルベロスは、宝物庫へたどりついた。
託された収納の魔道具に、戦利品の宝物を放り込んで行く。
いかにも邪悪な魔道具や、二束三文にもならないガラクタなどは回収しない。
洗脳が解けた今なら分かる。
持ち帰っても、パピヨン王とマルスリーヌ王女からどやされ、
罵倒されるのが落ちであると。
選別しながら宝物を回収していると、どこからか謎めいた声が聞こえて来た。
どうやら、宝物庫の最奥の壁には、いかめしい魔王の紋章が描かれており、
そこから声が発せられているようである。
但し、発せられているのは魔族の言葉であり、ラウルに意味は全く分からない。
だが、このような時に役に立つのが、魔獣ケルベロスである。
今回の魔王討伐においても、眷属どもを尋問し、
手掛かりを得るのに大いに役立ったのである。
いつものように、ラウルはケルベロスへ『通訳』を頼む事にした。
「おお~い、ケルベロス、あの声の通訳を頼むよ」
『………………………………………』
しかし、ケルベロスは返事をしなかった。
無言で、じっと魔王の紋章を見つめていた。
魔族言葉の声は引き続き、宝物庫に響いている。
「どうした? ケルベロス」
『………………………………………』
「おいったら」
『あ、主!! とんでもない事になったぞ!!』
いつもは冷静沈着なケルベロスは、珍しく興奮した声で、
主のラウルへ物言いしたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ケルベロスの興奮した声に驚き、ラウルは思わず聞き返す。
「え? とんでもない事?」
『ああ、今流れていたのは、原初の魔王からの残留思念……遺言だ』
原初とは、物事のいちばんはじめ。発生の最初の事。
そして原初の魔王とは初代の魔王だ。
初代の魔王の遺言とは、一体どういう事なのだろう。
『主よ、原初の魔王はこう言った。我の能力は、歴代の魔王に引き継がれると』
「歴代の魔王? 引き継がれる?」
『ああ、魔王を倒したものは、その能力を引き継ぐと言っている。まずは五感を始め、膂力、敏捷力、瞬発力など底抜けの身体能力が得られ、耐久力、回復力も著しく増大すると』
「もしかして、俺の身体が軽くなったのって、束縛の指輪が壊れただけじゃないんだ……そ、そういえば、えらく力もみなぎっているよ」
『うむ、やはりな! 加えて、魔法使いとして、術者として、今持っている既存の能力、スキルを底上げするだけでなく、全ての属性魔法が行使可能となり、魔力量と魔力回復力も同じく著しく増大すると言っているぞ』
「おいおい! 何だよ、チート過ぎるじゃないか!」
『驚くのはまだまだ早いぞ。禁断の秘法が数多ある能力だとも言っている』
「え? 禁断の秘法? 数多ある?」
『ああ、魔王が行使する禁断の秘法だが、変身、転生、魔力吸収、魔力放出、貫通、クリティカルヒット、呪いと毒の無効化、パーフェクトテイム、能力一時封印、他にもいろいろある。また禁断とまではいかないが、飛翔、浮遊、転移、念動、念話などもある。更に眠ったままの素質を開花させる作用もあるらしい』
「す、すっげ~な! それってオールマイティ、万能じゃないか!」
『ああ、創世神のように、全知全能とまでは行かないが、万能レベルだ』
「うおおお!」
『遥か古より我はこれまで何人も勇者を見て、一緒に戦った事もある。その中でも主は破邪、降魔の力に加護されたトップレベルの勇者だ。加えて魔王の能力も加わるのなら、創世神に仕える天の使徒に近い力を得るのではないかな』
「えええ!!?? お、俺が!!?? 創世神様に仕える天の使徒おお!!?? そ、そ、それって天使いい!!??」
『そうだ! それも冥界の悪魔をも簡単に退ける最上級の大天使レベルであろう』
「お、おお! ほ、本当にすげえ! さ、さすがに驚いたよ……もう人間ってレベルを完全に超えてるな」
『うむ、勇者プラス魔王だからな! 我もさすがに驚いた。では早速試してみよう。今の主ならば、心と心の会話、念話が使えるはずだ……精神を集中し、我に話しかけてみるがよい』
「わ、分かった!」
ラウルはそう言うと、
『ケルベロス! 聞こえるか?』
と、呼びかけた。
即座にケルベロスから言葉が返って来る。
『うむ、良く聞こえる! とても初めて念話を使ったとは思えないぞ! ……それで、我からアドバイスがある!』
『アドバイス? ケルベロスから?』
『うむ、我に、マルスリーヌ王女の化けの皮を剝がす、良い策があるのだ』
『そ、そうか!』
『うむ、但し父親のパピヨン王とともに王女の本性が分かれば、主は王家と決別し、改めて人生をやり直す事となる。その覚悟があるのなら、話をしよう』
『覚悟? 全然あるよ! 俺はこれ以上道具として、都合の良いように使われるのはまっぴらなんだ』
『分かった! ならば策を授けよう』
魔獣ケルベロスはそう言うと、おもむろに話し始めたのである。
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