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第19話「ソロプレイヤーは勿論だが、クランに所属していても所詮冒険者は個人事業主。 自分の才覚で、生きて行かねばならない」

本館を出たロジェは、ギルド敷地内の闘技場へ。


「やばい、急ごう」


……本当はもう少し余裕をもって闘技場へ入る予定だった。


『生活魔法を使える戦うシーフ職』でランクE合格というイメージを持ち、

教官がそう判定するボーダーラインをイメージし、

頭の中で散々、シミュレーションを繰り返す作業に時間をかけすぎたのだ。


「すみませ~ん! ランク判定試験を受けま~す! 午後1時30分予定のロジェ・アルノーで~す!」


ロジェは謝りながら言い、申し込みを済ませた。


「もっと早く来いよ。しょ~がね~なあ、急げ」


受付けの職員は苦笑し、ロジェへフィールドへすぐ出るよう促した。


「は~い! ありがとうございます! 本当にすみませ~ん! 急ぎまあす!」


ここから準備運動がてら軽くダッシュ。


フィールドへ入ると、ロジェの前にランク判定試験を受ける冒険者志願者が、

まさに『戦闘中』であった。


担当の試験官は、アルフォンス・カルヴェという名らしい。


このシーニュ王国王都支部所属冒険者の中でも、

結構な実力者であるランクAの魔法剣士なのだと、

ロジェは、冒険者基礎講習受講の際に聞いていた。


剣聖に近いと言われる剣さばきに、魔法も2属性を使いこなす複数属性魔法使用者(マルチプル)で、30代前半の男性との事。


試験は、模擬戦で刃を潰した練習用雷撃剣のポイント制である。


致命的というイメージの重いダメージを与えずとも、

雷撃剣の刃身が、相手にほんの少し触れるだけで、有効ポイントとなり、

10ポイント先取すれば勝利となるルールだ。


ロジェが見やれば、魔導掲示板のポイントは0対8。

志願者はロジェと同じくらいの年齢で剣士らしいが、

アルフォンス試験官へは一太刀も浴びせてはいない。


一方、アルフォンス試験官はさすがに余裕のよっちゃんという雰囲気。


必死に繰り出す志願者の攻撃を「ひょひょいのひょい」と避けていた。


ここで、ロジェは、ストレッチを行いながら、

じ~っと、アルフォンス試験官の動きを観察する。


……実はこれも原初の魔王の能力の一環。


ロジェが行使しているのは、名称が少しかっこ悪いが、スキル『癖見破り』である。


しかし、ダサい、つまらないと、侮り馬鹿にするなかれ。


スキル『癖見破り』は、相手がアクションを起こす際の予備動作やちょっとした動きを捉え、即座に認識するのだ。


戦う際、相手の動きを予想出来れば、余裕をもって対処OKだから、

なかなか有効的なスキルだと言えよう。


また、相手が自分と「著しく実力差がある」場合、『見切る』事も可能らしい。


ロジェはこれまで試した事がなかったので、丁度良いと思い、

このランク判定試験でテストしようと考えたのだ。


そして、結果はと言えば………………………………………………………………………


………………………………………………………………………………!!!


よし! 上手く行ったぞ!!! とロジェは心の中でガッツポーズ。


そう、魔法剣士たるアルフォンス試験官の予備動作、癖を把握し、

『動き』を完全に「見切った」のだ。


魔法はともかく剣技と体術のみで戦うのなら、

アルフォンス試験官の攻撃は全て楽に避けられる。


ロビーで立てた作戦は、シミュレーション通りとなりそうだ。


と、ここで!

アルフォンス試験官の一撃が、戦っている志願者の腕を叩いた。


びりびりびりっ!


軽度の雷撃とはいえ、結構なショックである。


「ぎゃ!」


志願者は悲鳴をあげ、思わず自分の剣を放してしまったのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


アルフォンス試験官の一撃で、スコアは0対10となった。


「そこまで!」


審判役の試験官の声が響き、試合終了――すなわちランク判定試験も終了である。


「くっそ!」


志望者は悔しそうに呻き、「ちっ」と舌打ちもした。

不機嫌そうに、足でフィールドも蹴っている。


それを見たロジェは、まずいなあと思いつつ、見つめていた。


試合に惨敗して、悔しい気持ちは大いに分かる。


でも、現在自分が置かれている状況を認識しているのなら、

「ありがとうございました」とアルフォンス試験官へ礼を述べるのがマナーであり、常識だ。


ソロプレイヤーは勿論だが、クランに所属していても所詮冒険者は個人事業主。

自分の才覚で、生きて行かねばならない。


そして、これはどの社会でも言える事だが、

人間はひとりで生きて行くことは不可能であり、

周囲への気配りは、必要不可欠なのである。


それを考えれば、自分勝手に振る舞う、今の志願者の態度はまずい、まずすぎる。


案の定、アルフォンス試験官が志願者を見る眼差しは、ひどく冷たかった。


ランクの判定はシビアに行われてしまうだろう。


それでも一応、礼だけはして、志願者は去って行く。


これで試験は完全に終わった事となった。


すると、ロジェが控えていたのを見た審判役の試験官が、


「君は次の志願者かな? 準備が出来ているなら、すぐに試験を開始するが、どうかね?」


と、尋ねて来た。


対してロジェは、


「はい、お声がけ頂き、ありがとうございます。準備は出来ていますので、いつでも始めてください」


と笑顔で返事を戻した。


ロジェの返事を聞いた審判役の試験官は、


「お~い、アルフォンス。次の試験を始めて構わないか?」


と声を張り上げた。


するとアルフォンス試験官は、


「ああ、いつでもOKだ」


と、余裕しゃくしゃくという雰囲気で答えた。


ロジェは、


「宜しくお願い致します」


と言い、深く一礼すると、ゆっくりとアルフォンスへ向け、歩みはじめたのである。

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