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第15話「うふふ、じゃあ思う存分、ロジェ様に甘えますね♡」

翌朝、午前4時。

ロジェとアメリーは、市場へ買い出しに出かけた。


毎朝この時間に、アメリーが宿泊者用の食材を買い出しに出向いているのだが……


昼間、昨夜の流れから、アメリーがロジェの同行を望み、

加えて母のオルタンスからも、

「ぜひ娘と一緒に行ってほしい」と頼まれたのだ。


一方、ロジェも、美しく素直で純粋、働き者のアメリーと仲良くなるのは大歓迎。

口には絶対に出せないが、悪役王女マルスリーヌにより、

深く傷つけられたメンタルを、可憐なアメリーならば優しく癒してくれるのではと、

願ったのである。


また、早朝というシチュエーションから事件発生の可能性は低いのだが、

愚連隊のかぎ爪団が、アメリーに対し、付きまといの嫌がらせや仕返しをするかもという懸念もあり、護衛をしなければという考えもあった。


という事で、白鳥亭を出て、ふたりで並んで歩くロジェとアメリー。


白鳥亭を出た時からず~っともじもじしていたアメリーは、しばし歩くと、


「あの……ロジェ様」


と呼びかけた。


「はい」


呼ばれてロジェが返事をすれば、アメリーは意を決したように言う。


「いきなりですがロジェ様、私と手をつないで頂いても……宜しいでしょうか?」


「え? 俺と? 手を? ですか?」


意外な申し出に驚いたロジェが尋ねると、念を押すようにアメリーは更に言う。


「はい、駄目でしょうか?」


思わずロジェが見つめると、頬を少し赤らめたアメリーの目力が強い。


否、強すぎると言って良い。


美しい碧眼は、真っすぐにロジェを見つめ返し、


勇気を出して言ったのだから、絶対にお願いしたい! 

私と手をつないで欲しい! という鬼気迫る雰囲気。


そんなアメリーに、ロジェは気圧(けお)されたようになる。


ここは承諾するしかない。


「い、いえ! 全然構いません! その……手をつないだ方が安全ですし」


「そうですよね! ありがとうございます。では……」


と言い、にこっと笑ったアメリーは手を「すっ」と差し出した。


「ふう」と息を吐いたロジェは、差し出されたアメリーの手を、

しっかりとつかんで握り、ふたりは寄り添って歩き出した。


ぴたっと身体をくっつけ、歩きながらアメリーは言う。


「申し訳ございません。ロジェ様より3つも年上のお姉さんなのに、甘えっぱなしですね、私ったら」


いえ、こちらこそ。

と、ロジェは心の中で苦笑した。

変身魔法で15歳の少年に擬態していますが、本当は20歳の大人なんです。

やむにやまれぬわけありとはいえ、年齢詐称してすみません……

と、やはり心の中で謝る。


しかし、そんな事を実際に言えるはずもなく、


「いえ、こんな俺でよければ、どんどん甘えてください」


と無難な答えを返すしかない。


すると、


「うふふ、じゃあ思う存分、ロジェ様に甘えますね♡」


と言い、ぎゅぎゅっとロジェの手を握るアメリー。


放つ心の波動から、アメリーの言葉には噓偽りが無い事が分かる。


ああ、本当に素直で可愛い人だなあ。


美しいバラにはとげがあるを地で行く、

腹黒いマルスリーヌ王女とは大違いだとロジェは心底思う。


それに全くタイプが違うけど、アメリーさんは美しさでも、

マルスリーヌ王女には負けてはいないし。


ここまで考えて、ロジェはハッとし、気付いた。


そうだよ!

俺は、大好きな想い人とは、このように愛し愛される間柄になりたかったんだ。


10代の頃は、未経験だったけど、

青春――『あおはる』って、こういう感じなのか!


ああ、人生をやり直して本当に良かったああ!!


幸せを実感し、嬉しくなったロジェもアメリーの手をぎゅぎゅっと握り、

ふたりはシーニュ王国王都の市場へと入って行ったのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


……パピヨン王国王都の市場もそうであったが、

このシーニュ王国王都の市場でも様々なものを売っている。


肉、乳製品、魚、野菜、フルーツ、そしてそれぞれの加工品等々。


白鳥亭は基本的に1泊2食《朝食、夕食》付き。


朝食はパンにスープ、スクランブルエッグというシンプルなものだが、

夕食は毎日献立が変わる。

それゆえ、献立の考案に難儀するのと同じく食材の調達は結構な手間がかかる。


また、白鳥亭には、馬車がない。


買い出しの際、いつもはアメリーが小型の荷車を曳いて行くのだが、

今日は、ロジェが収納の魔道具――腕輪に搬入し、運ぼうと提案。

オルタンスとアメリーが大いに喜んだのは当然であった。


何故収納の魔道具を使わないのかと、ロジェがアメリーへ聞けば、

シーニュ王国において、収納の魔道具は大変高価であり、

新品で金貨300枚はくだらない、中古でも金貨100枚以上するとの事。


その話を聞き、ロジェはとても驚いた。

故国パピヨン王国の相場より5倍以上高いから。


なので先ほど、老店主から庁が付く破格の値段、金貨5枚で売って貰ったと言えば、大騒ぎとなり、店にも迷惑をかけそうなので黙っておく事にする。


さてさて!


オルタンスから献立メモを預かり、

買い物をするアメリーのルートは決まっているという。


いつも定期的に購入するので、店側の食材の手配や価格には融通がきくらしい。


……という事で、市場の各商店主達にとって、アメリーは完全に馴染み客。


仲睦まじく買い物をし、収納の腕輪へ購入した商品を放り込むロジェとアメリーへ、

各店主達は、昨夜の常連商人と同じく『突っ込み』を入れて来る。


「ひゅ~、凄く仲が良いねえ、奥手のアメリーちゃんにも、とうとう恋人が出来たのかい?」


「よう、アメリーちゃん、彼氏とは凄くお似合いだよ、おめでとう!」


「おお! 結婚したら、姉さん女房になるんだねえ、年下の旦那を大事にしなよ、アメリーちゃん」


などなど……

どうやら、アメリーはその親しみやすい可憐さゆえに、

いじられやすいタイプでもあるようだ。


そんな商店主達の『突っ込み』に対して、アメリーは真っ赤になりながら、


「い、いえ! ま、まだ、ち、違いますよっ!」


『まだ』と付け加え、昨夜のように「違う」と全面否定しなかった。


これは、いずれロジェとそうなりたいという、願望なのか、

アメリーは嬉しそうに、何度もまだと、答えていたのである。

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