第11話「少し考えたが、ロジェは強引に行く事にした」
老店主の武器防具屋で中古の一式を購入。
兜付きの革鎧に身を包み、左右の腰にはスクラマサクスとひのきの棒をさげ、
更に収納の腕輪も左手首にはめ、ロジェはシーニュ王国王都の街中を歩いていた。
……さてと、今日の最後は宿探しだ。
冒険者になる必要経費とはいえ、この一式の購入に金貨20枚を使ってしまった。
残りはといえば、金貨30枚と銀貨銅貨が若干枚。
これから宿代もかかるし、うかうかしていたら、
あっという間に手持ちのお金は尽きる。
その前に、冒険者となって生活費を稼がなくてはならない。
確かこの王都には宿屋が集中している一画があった。
そこへ行き、今の自分に折り合う宿屋を探してみよう。
予算は食事付きで一泊銀貨5枚までといったところか。
そんな事を考えながら歩いていると、どこかで聞いた事のある声が……
「おい、クソアマ。誰に断ってここで宿の呼び込みをしているんだ」
「そうだ! 兄貴の言う通りだ! ショバ代を払え!」
「金がないのなら、俺達に付き合って貰おうか!」
ロジェが声のする方を見やれば、先ほどカツアゲ未遂の挙句に逃走した、
愚連隊の若い男3人組である。
今度は今のロジェより少し年上っぽい金髪少女に絡んでいた。
どうやら少女が宿の呼び込みをしているところに難癖をつけたようだ。
やれやれ……懲りない奴らだ。
ちょうど良い。
今度は威嚇スキルのテストをしてやろう。
ロジェはつかつかつかと近付き、男3人の背後から「おい」と声をかけた。
「あ~?」
「誰だ?」
「何だあ?」
一斉に振り向いた愚連隊3人組へ、ロジェはにっこりと笑う。
「おい、また会ったな。今度は逃げずに決着をつけるか?」
「はあ?」
「何だ、こら?」
「冒険者か? てめえ、誰だ?」
愚連隊の男3人は、ねめつけるような眼差しで戸惑いの声を発した。
平民服から革鎧に着替えた、冒険者仕様のロジェが誰なのか、判別出来ないらしい。
「おいおい、何、寝ぼけているんだ? 忘れたのか? 俺は、さっきお前達がカツアゲしようとしたクソガキだよ」
ロジェはそう言うと、ぎん!と怪しく瞳を光らせ、男達を見つめた。
勇者時代の威嚇は、相手を行動不能にするレベルであった。
魔王の威嚇が加わると、相手を気絶させたり、
石化させる事も可能だと『遺言』にはあった。
まあ、さすがにこの3人を石にするつもりはない。
だが、更に懲らしめる必要はあるだろう。
なので、あくまで軽度の脅すレベルの威嚇にとどめる。
「ひいいっ!」
「ぎゃ!」
「お、お助け!」
3人はぺたんと座り込んだ。
威圧の威力で、腰が抜けてしまったらしい。
「次にこういう事を見かけたら、もう容赦はしないぞ……行け!」
ロジェがそう言うと、男達3人はガクブル状態で頷きながら、
這って逃げ去ったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
愚連隊の男達3人を人にらみで追い払ったロジェを、
絡まれていた金髪の少女は目を真ん丸にして見つめていた。
やはり15歳のロジェより少しだけ年上っぽい少女の瞳は美しい碧眼である。
顔立ちも整っていて、鼻筋がすっと通っており、相当な美人の部類に入るだろう。
凄く可愛い子で、綺麗な瞳だなあと思いつつ、
見つめ返したロジェは微笑み、尋ねる。
「大丈夫ですか? 怪我とかはありませんか?」
「…………………………………」
しかし、金髪碧眼の少女は無言で答えなかった。
否、驚きすぎて答えられないらしい。
「もし良かったら、途中まででも送りますが」
「…………………………………」
念の為、送ると言っても少女は相変わらず無言だった。
無理強いは出来ない。
ロジェは微笑み、一礼。
「……大丈夫みたいですね。じゃあ俺はこれで失礼しますよ」
踵を返し、ロジェは歩き出した。
ここで背後から声がかかる。
「ま、待ってください! お、お礼を言わせてください!」
さすがに無視するわけにはいかない。
ロジェは歩みを止め、ゆっくりと振り向いた。
少女は、振り向いたロジェをじっと見つめている
再び微笑んだロジェは、首を軽く横へ振り、
「いや、大した事はしていません。少し奴らを脅かしただけですから」
と謙遜した。
威圧のスキルを使った、テストをしたなどと言う必要はないからだ。
初対面の男から、いきなり送ると言われたら、お断りされるのが大抵だろう。
しかし、この状況である。
先ほどの愚連隊が、自分が居ないのを見計らい、再びしつこく絡む事もありうる。
少し考えたが、ロジェは強引に行く事にした。
慎重なのは悪い事ではないが、時には強気に押す事も大事である。
宿の呼び込みをしていたという事は、少女は従業員だろう。
どうせ、今夜の宿を探すのだ。
送りついでに少女が勤めている宿を見て、予算等の折り合いがつけば、
泊まってしまおうと決めたのである。
「俺はロジェ・アルノーと言います。貴女が勤めている宿まで送りますよ。どうせ、今晩泊まるところを探していますから」
一気に告げると、少女もにっこり笑い、
「私はアメリー、アメリー・ブーケです。勤めているというか、宿は白鳥亭と言い、私の実家なんです」
実家?
助けた少女アメリーは、白鳥亭という宿屋の娘だった。
「そうなんですか。じゃあ行きましょう」
「はい!」
という事で、ロジェは送りがてら、アメリーとともに白鳥亭へ向かったのである。
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