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勝利の日々

「オラSランクダンジョン制覇!」


「ぐごあああああっ!」


「ありがとうございます!」


 世界地図を手に入れてからはこれまでの四苦八苦が嘘みたいな順調な毎日だった。町に飛んで依頼を受けてボスの断末魔を聞いてギルドで感謝される。地図に書かれた町を達成済の印で埋めていくのは奇妙な快感がある。高ランク依頼をコンプリートした地方地図が重なる度に、次はどこの地方に行こうかとウキウキした気持ちにさせられた。



「さーて、この酒の味はどんなもんかね」


 そしてガンドムに頼まれた酒もちゃんと買ってきた。頼まれてすぐに用意できては怪しいと思い、数週間の間を開けている。


「ねえねえライト、それ何ー?」


「お酒?」


「ああ、ラムドワってとこで作られてる酒らしいよ。飲んでみようかと思って」


 食卓の向こう側から興味津々な孤児達に対し、簡単な説明を返す。もちろんガンドム用に一本は確保してあるのだが、それとは別に自分で飲んでみる用に晩の食堂に持参したのである。


「ほー、なんだか珍しい酒だね! 当然あたしの分もあるんだろ?」


 ウキウキした様子の院長に対して「もちろん」と笑いかける。こうして晩の食堂で開ければ最低でも院長は飲むだろうという計算の元に持ってきたのである。むしろ彼女が飲まないと一本分減らない可能性もある。


「何それ、私も飲みたい! 綺麗な入れ物!」


 大して酒を飲まないアナスタシアも祭りの空気につられて身を乗り出す。酒の飲み始めは15歳が目安となっているので、一応彼女も頭数に入っていた。


「ねえライト、これ度が強いやつ? おいしい?」


「いや、実はよく知らない。とりあえず飲んでみる」


 アナスタシア含め15歳以上のメンバーが、瓶を開けてグラスに注ぐ僕をじっと見ている。孤児達は大きくなったら村で働くようになるが、住む場所が無い時はそのまま孤児院で生活するケースもあるのだ。


「うん……おいしいな! これなら普通に飲めるぞ!」


 一口飲み干した後に下された僕の評価に、成人メンバー達は安心してコップを持って集まる。喉に熱さは残るが、意外にも飲みやすい初心者向けの酒だった。ガンドムが飲むくらいだからもっとオッサン好きのする酒かと思っていたのだが。


「じゃあいただきまーす!」


 アナスタシアがこちらに一言告げて、ごくごくと酒を飲み干す。酒に弱いアナスタシアでも飲める程度の酒で良かったなと今更ながらにほっとする。


 と思っていたら、突然アナスタシアが口に含んだ酒をこちらに噴き出した。


「うわ、汚な!」


 服を汚された僕は当然非難の声を上げたが、しかし当のアナスタシアはそれには一切反応しない。というか彼女はテーブルに手をついて苦し気にむせていた。


「アナスタシア?」


「……いやライト、なんなのこれ! めちゃくちゃ度の強いお酒じゃん! こんなの普通に飲める訳ないでしょ!」


 ようやく声を発せるようになった様子のアナスタシアが、今度は僕の方を非難する。え、アナスタシアってそんなに酒に弱かったのか? 僕と同じくらいだと思っていたが……。そんな事を僕が考えている横で院長もまた酒を一口含み、そして顔をしかめた。


「いや、これはそんなごくごく飲めるタイプの酒じゃないよ。私だってきついのに、ライトあんた大丈夫なのかい?」


「え?」


 アナスタシアはともかく、酒好きの院長が言うなら相当度が強い事になる。じゃあおかしいのは僕なのか? もしかして丈夫さ999999の影響?


「なんでそんな平気そうなの? ライトおかしくない?」


「い、いやまあ、はは、成分が沈殿してたのかな?」


「なにそれー! 貧乏くじじゃん私ー!」


 汚した僕の服や床をタオルで拭きながら不思議そうに言うアナスタシアに、適当な理屈で誤魔化す僕。酒に縁の無い年少の孤児達がそのやり取りでようやく楽しそうにはしゃいでいる。


「ねえねえラムドワってどんなとこー?」


「あ、ああラムドワね! 武器や服飾の店がたくさん並んでて、冒険者が凄く多く歩いている町らしいよ! ダンジョンの多さも相まってその手の商売が盛んなんだろうね!」


 年少組に聞かれたのを良い事に、見てきたような説明を畳みかけてその場を流す僕。アナスタシアはそれを聞きながらやっぱり首を傾げていたが、やがて席に戻って食事を食べ始めていた。

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