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完全体

 今日も今日とて風に吹かれて空を飛ぶ。遠くの町を目指して大陸を眼下に突き進む上空。ただし今日の飛行はやみくもな旅路ではなかった。


「ふふふ……凄いぞ! 上空から見た大地の形が地図と同じだ!」


 誰も聞いていない空の果てでそれでも声に出さざるを得ない高揚。広がる大地とその手に持った紙とを見比べながら、僕はその一致具合にいちいち感動していた。


 世界地図! これさえあれば文字通り世界中の人々を救う事ができる!




「そうですね、この大陸の形はそのままで良いかと思います。ここに大都市のメランギがあって、近くに大きな川が流れていて……」


「なるほどなるほど!」


 あれから僕はマリアに頼んで、世界地図の修正点や主要都市の場所を教えてもらった。そしてそれを逐一書き込んでいけば、実用に耐えうる本物の世界地図の完成となるのである。


 もちろんそれだけでは見辛い事この上ないので、大きな町で職人を探して新たに描き起こしてもらう事にした。完成までの三日間は相変わらず「また来たの?」という顔を方々の町でされ続けたが、それももうすぐ終わると思えば苦にならなかった。あと三日で世界地図が手に入る。手に入った後の自分は地図と大地を見ながらきっとほくそ笑んでいる!




「ふふふ……」


 思い通りにほくそ笑みながら空を飛び回った僕は、ノウィンに戻った後もずっとにやにやしていた。今日は「さっき来ましたよね?」なんて一度も言われなかった。町の位置を正確に把握し、被りの無い最小限のルートで高ランククエストを達成する事ができたのだ。


「おう、どうしたそんなに嬉しそうにして」


 そこに髭の生えたオッサン、ガンドムが話し掛けてきた。武器と道具袋を持ったところを見ると、またダンジョン調査の仕事だろう。


「見ろ! 世界地図だ!」


「世界地図? ほおー?」


 問われたからには見せてやろうと、ポケットから地図を取り出してガンドムの前にばっと広げる。何度も無意味に広げ続けていたため、この一連の動作に関して圧倒的な手際の良さを獲得していた。


「ちょっと見せてみい」


 そう言いガンドムは両手を差し出してくる。僕は「壊すなよ」と前置きしてから、世界地図を渡した。


「ラ……ラ……お、あった。ラムドワの町。ほれ、ここじゃ」


「ラムドワ?」


 彼の指さした先はノウィンから南、ゴダインなどよりももっともっと遥か遠くの離れた場所にある都市だった。地図に記載されているという事はそれなり以上に大きな都市なのだろう。


「わしの故郷じゃ。そうそう、ノウィンから見るとこの辺になるんだったな。ごつごつとした切り立った崖が多くて、鍛冶が盛んな町じゃった」


 そういえばガンドムからはもともと鍛冶師をやっていたという話を聞いた事があった。特に何不自由なく順調に暮らしていたのに、ある日やっぱり冒険者がやってみたいという事で旅に出たのだとか。


「やー、なんだか思い出すと懐かしいのう。ラムドワの酒をまた飲みたくなってきたわい」


「ふーん」


 僕に地図を返しながら、懐かしそうに目を細めるガンドム。確かにガンドムだって少なくとも二年は故郷から離れている事になるし、それは懐かしいだろうな。


「じゃあ、そこの酒を市場で見かけたら(・・・・・・・・)買っといてやるよ」


「ははは、そりゃありがたいのう。もしあれば頼むぞい」


 そう言い、ガンドムはダンジョンのある森の方へと向かっていった。故郷の酒を手渡された時の彼の反応を想像し、僕はまたほくそ笑むのだった。

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