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「どういう事だ? こんな女が?」


「この女は人間じゃないのか? 何故ステラを?」


 映し出された犯人の姿に、村人たちが口々に疑問を並べている。アナスタシアや院長も顔を見合わせて困惑している。


 だが一番困惑しているのが僕だ。これは誰だ? 何故僕じゃなくてこの女が映し出されている?


「やはり彼女だったようですね。……魔物の姫(・・・・)


 その場の疑問に答えるように、スミフ氏が口を開いた。


「魔物?」


「やつは魔物なのか?」


「どういう事だ?」


 多くの人間が集まった今日のこの場に数多の疑問が渦巻いていた。一つの解を与えられた村人たちが、それを元に口々に次の疑問を生み出している。


「ああ、噂に聞いた特徴と一致しておるわい」


 村人たちの反応を受けてか、ガンドムも頷いて言う。


「肩まで届かないくらいに切りそろえられた白い髪、あまり見ない肌と目の色。こいつが魔物の姫と見てまず間違いなかろう」


 そこまで説明をされて、にわかに村が騒がしくなる。


「そ、それって魔物を統率して人類を根絶しようとしてるっていう例の?」


「別の町のギルドで聞いたことあるぜ! 原因不明の魔物の大量発生は魔物の姫が手引きしてたって話!」


「なるほど……そりゃやりかねないぜ」


 ノウィンで活動中の冒険者達を中心に、魔物の姫に対する言及が広がっていく。そしてそばで聞いている僕は、そのどれもが全く頭の中に入ってこない。魔物の姫がどんなやつかなんてどうでもよくて、何故僕以外のやつがステラを攻撃しているのか、そればかりを頭の中で繰り返しずっと考え続けている。


「つまり最初に予想されていた通りって訳だな。事件は魔物の仕業で、ステラは暗殺されていた」


 まだ事態を飲み込めていなさそうな村人もいる中、ジョシュアが改めて口を開いた。


「そして……こいつが俺たちの仇って訳だ……」


 困惑気味だった村人たちもハッとして映し出された女を見る。その瞳には確たる闘志が燃え上がり、全ての感情がついに一つ所に統一されたように見えた。


「そうだ、こいつが俺らの仇だ!」


「こいつがステラを! ノウィンをこけにしやがった!」


「本当ならステラが世界中の魔物を消していたのに! 許せねえよ!」


 村に湧き上がる数々の怒号。村人たちの悔しさ、怒り、そして激烈な闘争心、その激しい想いの全てが僕以外のよくわからない何かに向いている。


 こいつらは一体何を言っているんだ? ステラは僕が殺したんだ。僕がステラを9999の力で振り払った。あの日ステラの方を振り返ったら彼女は死んでいたんだ。そのはずなのに……。


「なあどうすんだジョシュア? 仇はわかったけど……ノウィンはこれからどうすりゃ良い?」


 少し冷静なのかあるいは気力に欠けるだけか、一人の村人が問いかける。実際村ぐるみで戦争する訳にもいかないし、現在この村にいる戦闘員もほぼ村外の人間だ。


「別に何か変わる訳じゃねえ。今はとりあえず村興しが優先だ。ステラ抜きでもやっていけるように地盤を整えなきゃならねえ」


 少しがっかりしたような、水を差されたような空気が広がる。僕が犯人だから今が断罪の時だったはずなのに、魔物の姫なんてここにはいないから断罪する事もできない。


「だが……こいつの顔は忘れねえ。いつか必ず、こいつは俺の手で殺す」


 先の空気から一転、再び村の中に喝采が沸き起こった。


「そうだ、俺たちにできるのはちゃんと村を立て直す事だ!」


「任せろジョシュア! あんたが仇を討てるように村を盛り上げてやる!」


「この村を世界で一番にしてやろうじゃないか!」


 闘争心のぶつけ先を提示された村人たちは、一層奮起して勇ましい声を上げる。本来だったら僕の罪をなじるために生まれたはずのあらゆる想いが、僕を置いてけぼりに全くの別方向に走り出している。


 一体何がどうなっているんだ?


 僕はいつまでも目の前の光景を理解できず、しかしいつまでもその理解できない光景について考え続けていた。

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