最強でーす!!wwwいえーい!うぇfg死ぇ
「という訳で辞めます!」
カウンターにドンとギルド職員の腕章を置き、目の前のフィリアさんに告げる。
「……いやという訳でって何ですか!? ちゃんと説明してくださいよライトさん!」
フィリアさんは困惑しながら僕に言葉を返す。おっと、僕の溢れんばかりのオーラで説明できていたつもりだったが、言葉足らずだったか。
「いきなり休みの日に顔を見せたと思ったら、もう……辞めるなんてどうしてですか?」
「ふふふ、それはね」
呆れてこちらを見るフィリアさんに対し、僕は余裕の含み笑いを決める。
「僕が……唯一無二だからですよ……」
「うざ……」
フィリアさんの冷たい態度にも全くダメージを受けない。ユニークだから効かない。
「とにかく今までありがとうございました! いずれこのギルドは僕の功績で評価されますよ! それでは!」
「……あ、ちょっと! 戻ってくるなら早めに戻ってくださいよ! いつまでも籍を残しておけませんからね!」
全然信じていないフィリアさんに苦笑しながら、僕はギルドを後にする。だってもはや止まっていられないのだ。僕の中には世界を変える可能性が秘められているのだから。
名前:ライト 年齢:16歳
力:999999 丈夫さ:5000 速さ:999999
火魔法:63 水魔法:7
雷魔法:1 風魔法:999999
氷魔法:0 土魔法:1
木魔法:0 光魔法:2
……
「うおお来た来た、体に未知の感覚がぁ! 解る! 今、僕の体に力が宿って速さが宿って風の魔力が宿っている!!」
町の外、みなぎるパワーに一人で興奮している。ステータス変化のだいご味だ。
「どうやら数字は999999まで増やせるらしいな! なんて膨大な数値! 何だってできるだろこれ!」
雑に1111111111……と縦線を引きまくったのだが、全部丸められて999999になった。わかりやすくて良いじゃないか。ぼくは999999の男という事だ。
「さてと、どこまで行けるかな……ドラゴン? アークリッチ? ヒュドラ?」
今日この場にはテストのために来ていた。目の前にそびえたつ山脈。そのいただきにうごめくかすかな影。
「『レビテーション』!」
風を放ち、僕の体は勢いよく空へと上昇していく。自由自在に飛び回る浮遊魔法「レビテーション」……風魔法の奥義である。
あっという間に山の高さを越える。宙に浮きながら眼下に見る山頂の光景……乱立したダンジョンに、そこから出てくるおびただしい数のモンスター達。
「うひゃあ! 流石は冒険者も手が届かない山の上だ!」
僕はそう言いながら、風をまとって急降下する。ズンと音を立てて着地すると、あたりの魔物が一斉にこちらを向く。ポイズンワーム、ハイオーク、ワーグ、サイクロプス、ドレイク……100を越える総数はSランクパーティでもきついだろう。なのに僕は恐ろしさを感じていない。
「おらおらおらーーー!」
まさに疾風迅雷だった。僕はほんの試しに剣を持って目の前の魔物に切り掛かったつもりだった。しかし先頭の魔物を両断した事を皮切りに、ついでに勢いで近くの魔物も次々にきり伏せてしまっていた。だってできたから。軽く振るだけで一撃必殺だったから。
気付けば山の魔物を一掃していた。最後の一匹に剣を突き刺して止まると、最初の魔物が崩れ落ちる。連鎖的に敵共はバタバタと地に伏せ、無人の魔境に一気に静寂がおとずれた。
「す、すげーーー! 世界一だよこれ! あんな奴らが1秒も掛からずに討伐できるなんて!」
昨日から興奮に次ぐ興奮でテンションがやばい。足元に地面狭しと横たわる、中にはAランクだって含まれる貴重なモンスター達。
「ドレイクの角! 売れば高価な武具用素材! ハイオークは食材だ! これ全部僕が持ってっていいのか!」
突然の湯水のような供給に、脳が茹で上がっていく。ああこんなの絶対に金銭感覚がバカになる。でも良いだろ? もはや家だろうがなんだろうが好きなだけ買えるんだから!
……と、そこにダンジョンの中から勢いよく一匹のドラゴンゾンビが出てきた。恐ろしいドロドロの顔で吠え声を上げながら、物色中のこちらへと迫ってくる。
「うわっと! 『ウィンド』!」
しゃがんだ姿勢から反射的に魔法を発動させる。凄まじい大風はドラゴンの羽を突き破り、そのでかい図体を丸ごと山脈の反対側まで吹き飛ばしていった。
「グゴオオオオオォォ……!」
遠くなっていく鳴き声と共に、ドラゴンゾンビはふもとの広大な森へと落ちていく。とどろく激突の音。鳥がいっせいに木々から離れていく。
「やれやれ、慌ただしい……あっちには村があるし、トドメを刺しにいくか」
貴重な素材を置き去りにして、すぐさまレビテーションで後を追う。そう、山脈の向こうを進めば僕の生まれの村『ノウィン』だ。落ちたのが森の中だからいいが、村まで迷い込まれてはたまらない。
森の上空から視線を落とし、木々の隙間からドラゴンの姿を探す。見つけた。どうやらちょうど近くの大岩にぶち当たったらしく既に瀕死で、立つのにも苦労しているようだ。
「何これ! 何で空からドラゴンゾンビが!?」
「ん?」
森の中から聞こえた声に、目を凝らす。よくよく眺めるとそこにいたのはドラゴンゾンビだけではなかった。重傷の腐竜を見上げて驚く、僕と同い年くらいの村娘。
「こんなボロボロなの、普通じゃできるはずがない……一体誰が……」
しきりにドラゴンを観察して不思議そうな顔をしている。なんだ、村で僕が仲の良かった女の子じゃないか。二年前に町に出る時に頑張れって言ってくれたっけ、懐かしいなあ。
「おーい! ここだよ!」
声を掛けながらレビテーションを解いて落下する。僕は彼女とドラゴンの間に着地する形で地面へと降り立った。
「え!? なになに!? ライト!?」
突然現れた知った顔にビックリする少女。僕はその顔を見て妙に得意げな気持ちが湧いてくる。
「いやちょっと、後ろ後ろ! 危ないって! ドラゴンがまだ動いて……」
「大丈夫、僕にまかせて!」
僕は彼女を手で下がらせ、ドラゴンに向き直る。敵意を燃やしてこちらをにらむ眼差し。ぼくはそれを見ながらステータスを出現させ、聖魔法に999999を書き加えた。
「ターンアンデッド!」
かざした手の平から放出される、聖の魔力。それに晒された竜のゾンビはたちまち崩れ去り、数秒も立たない内に欠片も残さず完全消滅してしまうのだった。
「ほらね、大丈夫だっただろ? ビックリさせちゃったかな!」
余裕をもってそう言ってのける。もちろんビックリさせるためにやったのだ。僕は得意げな笑みを浮かべて後ろを振り返った。彼女の、その驚いた顔を確認するために!
いない。
そこには彼女がいなかった。羨望の眼差しで立ちつくしてこちらを見ているはずの彼女がいなかったのだ。
だけど「何処に行った?」なんて思わなかった。そのほんの一瞬後にすぐ彼女が見つかったからだ。
なんだ、背の高い草にまぎれて見えなかっただけだ。視線を下げればすぐそこにいた。仰向けに倒れ伏し変な角度で空を見上げているとても静かな彼女がそこにいたのだ。
「えっ?」
間抜けに声を出して、その姿をただ見ていた。さわさわと心地よい風が僕らの間を通り抜けていく。少女は草がゆれるのにまかせてその横たわる体をなでさせ続けている。
僕はその非現実的な光景を眺める内、なぜか体の感覚がひどく遠くなっていくような気持ちにおちいっていた。
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