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ドロシーを探しています

 ガヤガヤと街の往来を行き交う顔も知らない人々。何か別の目的地があって歩いている彼らが、ただ通り過ぎるはずの道でふと立ち止まって同じ方を見る時がある。僕もそちらの方を見る。足を止める人々を。その先にある大量の絵や文に彩られた()()()を。


「ふっふっふ、完璧だ!」


 そこには僕の描いたドロシーの絵と共に、目撃情報募集の人探し依頼が貼ってあった。尋ね人の貼り紙。それがいまやこの町の至る所に貼られているのである。







「え、えっと……これは……」


 応対する冒険者ギルドの受付は顔を引きつらせていた。カウンターの上には大量の似顔絵。描かれているのは16歳程度の可憐な少女だ。


「目撃情報募集の依頼を出したいんです! この絵を使ってドロシーを探してください!」


「複製するから一枚で良いんですよ」


「好きなのを選んでください!」


「どれも好きじゃないです」


 受付の塩対応にも僕の満ち溢れる気力は少しも萎えない。どんなに面倒そうな態度を取られようと、目の前の世界が開けた僕にとってはちっぽけな光景だ。


 僕はノウィンでドロシーに会った日からずっと混乱していた。村の皆がドロシーなんて知らないと言う。確かにそこに存在して喋っていたはずのドロシーを僕以外の誰も見た事が無いと言うのだ。


 だがその解決法は驚くほど簡単な事だった。ドロシーの事がわからないなら僕が教えれば良かったんだ! 僕が世界にドロシーの手がかりを示し、そしてそのドロシーを世界が見つけ出す! なんて美しい協力関係なんだ! 僕と世界、どちらが欠けてもドロシーは見つからない! あの日僕がドロシーに会ったのは、世界へドロシーを伝えるメッセンジャーになるためだったんだ!


「なんで初めからこうしなかったんだ!」


 そうだ、世界を飛び回れるユニーク能力者だからって別に自分ひとりで探す理由なんて何もなかったじゃないか! 普通は探したい人がいる時は冒険者ギルドに尋ね人依頼を出すのが当たり前なんだ! こんな基本的な事も忘れて馬鹿だなあ僕は!


「ではライトさん、貼り紙の草案はこんなもんでよろしいでしょうか」


「ああ、問題無いよ!」


 尋ね人のテンプレートに記載された人物情報を確認し、OKを出す。10代半ばを越えたくらいの少女、平均的な身長、魔法帽と杖、ほか色々……、と備考までばっちりだ!


「この『危害を加えない事』って必要ですか? 常識ですしいらないんじゃ」


「もし万が一があったら世界がどうなってしまうかわからないでしょうが!」


「そんな重要人物なんですかこの人……」


 そうして僕は必要な料金を払い、制作を依頼した。一週間以内に貼りだされるとの事だが、滞りなければ二日も掛からないはずだ。





「ふっふっふ……」


 冒険者ギルドから出た僕は、一枚だけ減った大量の絵を抱えながら笑いをこらえきれなかった。作成が済めば貼り紙は間もなく町中に貼られていくだろう。停滞していた世界、それが今日から全て動き出すんだ。


 そしてこれだけじゃない。何のためにこんなにたくさんの絵を持ってきたと思う? 別にギルド職員に気に入った絵を選んでもらうためじゃあない。


「今まで描いてきた絵はたくさんある! そして()()()()()()()!」


 そう、ここからがユニーク能力者たる僕の力の見せ所だ。普通は全ての町に尋ね人依頼なんて出せないし、たとえ出せてもそのすべてをチェックする事なんてできないだろう。


 だが僕ならできる! 圧倒的な素早さで世界を飛び回る僕は、全ての町に毎日成果を聞きに行く事ができる! 圧倒的コラボレーション! ()()()()による互いを補い合う夢の協力作業!


「ふっふっふ、もうすぐだ! もうすぐだぞ! はーっはっはっは!」


 今日を境に全てが変わる。世界の全ての人間があの貼り紙を見て、僕のこの想いを知るんだ! そして僕に協力してくれる! ドロシーの正体、僕の使命、この世界の秘密、きっとすぐにでも明るみになるぞ!


 尊き使命を胸に新しい風を肩で切って堂々と進む。街の人達もその姿に変革の予感がするのか、皆ちらちらと僕の方を見ていた。







 それから数週間後


 世界のあらゆる街に冒険者ライトによる尋ね人依頼が出されていた

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