平和な日々の終わり
世界の片隅で、巨大な卵が割れ、その中で眠っていた存在が覚醒した。
中から出てきたのは、闇のオーラをまとうまがまがしい生き物、魔人。
その瞬間に、平和な日々が終わりを告げたのだった。
魔人復活。
その出来事は瞬く間に人々の間を駆け巡った。
平和を満喫していた人たちは、あきらかに憔悴した様子だった。
「またなのか」
「いったいいつになったら魔人は死ぬんだ」
「同じ事のくりかえしじゃないか」
魔人は五十年から百年の周期で復活する。
それがその世界の当たり前だった。
復活した魔人はあばれまわり、各地をめちゃくちゃにしていく。
そのたびに勇者達が命をかけて倒していった。
しかし、いくら倒しても、なぜか再び生き返ってしまうのだ。
だから人々は短い平和な時間を、大切に過ごしていたのだが。
それだけに平和の終わりは、人々を奈落のどん底へ突き落とした。
「今回は早く討伐されるといいな」
「いったいいくつの町が壊滅してしまうんだろう」
「もう嫌だ、こんな事。誰か終わらせてくれよ」
頭を抱える人。
この先の事を心配して考え込む人。
遠く後にいる人の身を案じる人。
人々の反応は様々だった。
だがどれも負の感情である事にかわりはない。
そこには強烈な恐怖がにじみでていた。
これからその世界の人達には様々な危険が降りそそぐ。
そして、いかに平和が尊く儚いものだったのか、身をもって知る事になるのだった。
そこでは、平和はあたりまえではない。
大切で、貴重な、ものだった。