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てんし遭遇

目が覚めた。

周りにはなにもない。

真っ白だ。

これは、アレか?いわゆる転生モノの導入か?

死んだ覚えはないんだがなぁ。

こういう状況における定番の台詞といえば?

A:ここはどこ。私は誰。→大丈夫だ、ちゃんと自分のことは覚えている。ここがどこかはわからんが。...大丈夫じゃないな、それは。

B:...知らない天井だ......→ていうか、天井がない。かといって、屋外という感じもしない。空気の流れは感じないのに澱んだ感じもしない。単に高すぎて天井が見えていないのかもしれない。文字通りの天井知らずというわけだ。

...我ながらつまらん。

あれ?そう言や、俺立ってるか?...いやunderがstandしてるとかじゃなくてな?

足の裏にも背中にも何かに触っている感覚がない。

今頃気づくが、天井どころか壁も床も無かった。

体は抵抗なく動くから液体の中にいるわけでもないようだし、呼吸だって...あれ?

............

.........

......

...

苦しくない。

オカシイ。

いくら息を止めていても苦しくならない。

こういう状況における正答は?

A:人類は進化しました→やったね!酸素から解き放たれた新たな代謝を獲得したよ!!

B:オレシンドルヤンケ→必要ないから呼吸しなくてもいい、だけ?

えぇ...ほかになんかないかなぁ...

思考が死にとらわれているのか、他の選択肢を思いつけなくなったみたいだ。


「意外に冷静デスね」

へ?

「普通の人類は自分が死んだ、なんて可能性にぶつかったら少なくともパニックに陥るものデス」

若い、男の、声?姿は見えないが何となくイケメン的な口調だ。部下から慕われ、上司からは信頼が篤い営業課長でもやっていそうなヤリ手感。

「結論から言いますが、気づいているとおりそなたは死にました」

でしょうねぇ!本当はココで眼が覚めた時点で何となく気づいてましたよ!

「死んだ覚えはない」と言ったな、アレはウソだ!!

こんな場所、およそ人間が作るような場所じゃないモン!

ただただ駄々っ広いだけで、神秘的とか荘厳とか祈りたくなるような雰囲気とは全く無縁だよ、この空間。

そんな空間、タダの人間の発想じゃないモン!

人間にとっては、祈りの空間って超大事だと思うんだよね!?

ココ完全孤独実験より酷ぇよ。アレだって生活に必要なモノとかは用意されてたし5日間限定だったじゃん。何にも無いよココ!

そんな場所で、天使っぽいナニカの声が聞こえてきましたよ!もうええわ!!天国ですか地獄ですか、それとも流行りの転生ですか(泣笑)!?

口には出してないけど、どうせ思考ダダ漏れ空間なんだろ、わかってんだこっちは!長年その手のヤツを嗜んできたんだからな!!さあ、もう覚悟しましたよ、さっさと行き先を告げておくんなせえ!

「わかった、てんしデス」

ん?

んー...

天使っぽいナニカとは思っていたが、やはり天使だったようだ。

だが思考を読んだにせよ、なんで自己紹介的なことを今の文脈で言い出した?なんか違和感あるな。

「いや、私が天使なのは確かなのデスが」

お、話が続くようだ。やっぱり思考は読まれている、というか、意思疎通方法が発声じゃなくてテレパシーなのかな?まぁ、おれ死んでるみたいだしなぁ。呼吸しなくていいなら、発声もしかりなのかな。

あれ?でも「てんし」って言った(言った?)ときと「天使」って言った(言った?)ときのアクセントが違っていたような?

あとなにげに、この天使、「デス」のとき「DEATH」って言ってね?

もしやの「告死天使」ってヤツ?

キャラ付けに必死だったりするのかな?

「さっきからなかなかに失礼deathね」

今言った!絶対、deathって言ったよ!!舌先前歯の裏につけて息をはいたよ!!

「そなた、もう死んでいるのdeathから気にすることはない」

二度も言った!?親父にも言われたことないのに!!

「...あえて言ってやろうか?」

ごめんなさい、イケメンガノタ天使からの「滓」呼ばわりとか、一部の層ならともかく、おれには御褒美たりえません!

「...ガノタはともかく、てんしの件で説明がある」

...この天使、なんかちょいちょい話し方(話した?)がオカシイ気がする。

ひょっとして丁寧語は「デス」しか言わない上、実は「death」だったりするんじゃないだろうな?

やっぱりキャラ付け...

「キミのような勘のい」

ごめんなさい!!

思考が流れ始めた段階で食い気味に謝罪させていただいた。

いろいろオカシイだろこの天使、オタク知識なんてどこから仕入れてるのさ。

「そなたが合わせているだけで私自身には左様な知識など無い」

え、そうなの?

「そなた自身が、そなたなりの理解が及ぶべく翻訳しているにすぎぬ」

あー。

なるほど、つまり、もしおれが例えば宗教学者とか神父・僧侶とかだったら

「その者にふさわしい空間と理解が得られるであろう」

え、じゃあこのまっしろしろ空間も、

「そなたの人生それ自体の現れデス」

...いろいろと思うところはあるが、ひとまずはこれからのことを考えなければいかんよなぁ。



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