魂の切り売り
白いモヤがかかった場所に俺はいた。
俺はこれから現世に生まれ変わる。
ゲートに向かっていろんなやつが順番を待っている。
「お前が持っているものはなんだ?」
黒装束で大きなカマを持っている番人が、一人づつ質問をして、過不足を台帳に記載している。
時には持ち物が多すぎると取り上げられるヤツもいた。
「次」
俺の番だった。
「特になにも持ってません」
「では、現世に行ったら、その魂を切り売りして生きてゆくのだぞ」
「そんな生き方しなくちゃいけないんですか?」
ぐい。
カマを突きつけられる。
「誰もが大なり小なりそうやって生きていくのが現世だ。不服ならこの先にはいかせんぞ」
俺は迷った。
「迷っている暇はほとんどないぞ。今お前の母親が陣痛で苦しんでいる。早く決めないと悲惨なことになる」
俺は……。かすかに残っている前世の記憶をたぐり、人生が素晴らしいものだったと思い出した。
「いきます!」
「グッドラック」
おぎゃあおぎゃあ!
誕生おめでとう。きみに幸せが訪れますように!