天然悪役令嬢は不器用王子に愛される
天然令嬢←←←←←←←←←←←←王子
みたいな話です。
内容ほとんどギャグです。
「………え?」
なんということでしょう。
朝早くに目が覚めて、どうせなら散歩でもしようかしらとネグリジェのまま部屋の扉を開けると、
デーヴィド王太子殿下がいらっしゃいました。
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どうしよう。何故か私の部屋の前で座り込みながら爆睡してる…?!
今はおそらく朝の4時頃。使用人は起きてるかどうか微妙な時間だし、何よりこんな時間に起きてる人は忙しく仕事をしてるはずなので邪魔はしたくない。
かと言って殿下を放っておくわけにも…。
困ったわ。私の腕力では寝室に運ぶことはできないし。
…そもそもどうやって入ったのかしら。いくら殿下が私、エミリーの婚約者と言えども、流石に無断侵入は無理よね…?
………。なんだかうちの警備が心配になってきたわ。
それに、どうしてうちへ来たのかしら。最近殿下は男爵令嬢といつも一緒だなんて噂が流れてるのに。
あら…?よく見たら、殿下のお顔クマが酷いわ。
お疲れなのかしら。
「あれ、お嬢様、もう起きたんですかー?」
眠そうに使用人のリリーがやってくる。
リリーったらメイド服のリボンがぐちゃぐちゃだわ。
早起き苦手だものね。
「ええ。ところで、殿下がいつからいらっしゃったのか知っている?」
「あー……2時ごろじゃないっすか。いつもそれぐらいだし」
まだ目が開ききってない状態で答えられる。リリー、頑張って起きて!
「って、いつも?」
「…?ええ、いつも、この時間に来てますよ。
お嬢様の寝顔をご覧になられに」
……どういうこと?!
ちょっと情報量が多すぎて分からなかったわ!
「ちょっと、邪魔ですよ。お嬢様が起きちゃったじゃないですか」
そういうとリリーは殿下をゲシゲシと蹴る。
ちょ、まってリリー、その人この国の王子!!
「ってぇな、もっと優しく起こせねぇのか、ってエミリーー?!」
半ギレで起きた殿下は私を見ると物凄い勢いで後ずさった。
やっぱり顔色が悪いわ、お疲れなんじゃ…って思ったら急に赤くなったわ、大変、熱が出たのかしら。
「お嬢様、ネグリジェのままなので王太子殿下が興奮しておられます」
「しっしてねぇよ!
てかお前絶対今違う呼び方したよな?!」
「女性のことをお前なんて呼ぶ人は嫌われるんですよ、この王太子殿下」
「そこじゃねーだろ!あとごめんな!」
殿下、いつのまにかとってもリリーと仲良しだわ…!!
いやそんなことよりも!
「あの、何か用事があってうちに来られたのではないのですか?」
「ああ、やっと生徒会が頭を悩ませていた男爵令嬢の処分が決まって、落ち着いたから来たんだ。」
「嘘つかないでください。寝顔を見に来たんですよね、変態」
「もう直接的に悪口だよなそれ?!?!」
すごいわ、殿下ってこんなに怒鳴ったり出来るのね…?!
でも、男爵令嬢…?
「男爵令嬢って、殿下と恋仲だと噂の…?」
「「……………は?」」
突然リリーと殿下の目つきが変わりました。
私おかしなこと言ったかしら…
「どういうことですかお嬢様?」
「学校で噂なのよ。殿下は最近とある男爵令嬢にご執心だって」
「………お嬢様はそれを聞いてどう思ったんです?」
「しょうがないわ。愛の力は誰にも曲げられないものね。」
身を引くしかないでしょう。と言うと、2人は同時にがっくりと項垂れた。
まあ、もう双子みたいだわ。
「……俺のエミリー、俺は何度も君が好きだと言ってこなかった?」
「それはまあ婚約者ですもの、社交辞令では?」
「そんなわけないだろう?!」
物凄い勢いで否定され、首を傾げる。
「では、殿下は私のことが好きなのですか?」
「すっ………好きだよ!!!!!」
あら、私ずっと勘違いしてたのかしら。
「では、件の男爵令嬢は?」
「それは、あからさまに礼儀作法を無視して上位貴族に近付いていたから、暫く泳がせて何か出てこないか探ってたんだ。
ドンピシャで、父親が隣国からの諜報員だった」
なるほど…
恋仲なわけではなかったのね。
「お嬢様がほわほわっとしていることは知ってましたけど、ここまで鈍いとは知りませんでした」
急に失礼だわリリー。
「あぁ、まさか俺もここまでとは思わなかった」
なんてことでしょう、多数決で負けてしまったわ。
私は鈍いなんてことないと思うのだけれど。
「いいや、確実に鈍い、見てろよ、
卒業まで毎日エミリーへの愛を語りに来るから!!!」
そう言うと、殿下は悔しそうに走り去って行きました。
……なぜ?!