表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/43

5:クエスト

 習得しているスキルのうち、どれか一つでもレベルが2になると受けられる講習。

 それを受けることで、セカンドジョブ──つまりサブ職業を得ることが出来るんだって。


「セカンドジョブとは生産職のことで、それを取るか取らないかは個人の自由です」

「そのセカンドジョブに薬師ってのがあるんですか?」

「はい。生産特化の職業でございます」


 生産職が作る物は、手間暇をかけて作ったもの。

 ポーションを例にあげると、薬草を水洗いして乾かして、お湯で煮詰めて出来た液体を瓶詰めする。

 それを錬金術師は、薬草と水と瓶を錬成陣の上に置いて手を突くだけで出来ちゃう。

 繊細な作業工程を省くことで、素材の良さを引き出すといったこともできず──


「ですから、回復量は量産品である雑貨屋が販売する物と同じなのです。しかし考え方によっては、錬成で作るポーションは雑貨屋のポーションぐらいの価値はあると!」

「そ、そういう考え方も、あるんですね」

「はいっ。まぁそういうことですので、INTもあった方がいいですよーってことです。あ、生産を行わないのであれば必要ありませんけどね」


 うぅー、わたしは必要だよぉ。

 ステータス、全部DEXに振っちゃったし。

 このゲームは職業レベルがないから、レベルアップでステータスポイントがーってのもないし。

 そうなるとINTを上げるスキルは絶対必須!


 それでも──薬師さんの作るポーションには敵わない。だいたい薬師さんのポーションはスキルレベルが低くても、こちらの二割増なんだって。

 こっちもINTやスキルレベルが上がることで最大30%アップするけど、薬師さんも同じようにアップする。

 最大値はいつだって向こうが上ってこと。

 でも、INTを上げれば店売りポーションよりは効果が増えるんだし、あったほうがいいよね!


「研究の販売価格が15000ENかぁ」

「生産を行うなら必須ですねぇ。それでも本職には敵いませんが」

「ですよねー」

「はぁ。広く浅く、なんでも出来ちゃう錬金術師だっていうのに、何故こうも人が少ないのでしょうか」

「え、錬金術師って、少ないんですか?」


 今度はケミーさん、眼鏡を光らせることなく「そうなんですよ」と呟く。

 

「私がここに配属されて40日ほどですが、その間にここを訪れた錬金術師は、あなたを含めて──131人なんですよ」

「131人って少ないんですか?」

「次に不人気職である格闘家は2573人です」


 錬金術師の二十倍!?


「す……少ないんですね、錬金術師さん」

「錬金術師じゃなくても生産は出来るから! という理由かららしいです。悲しいですね」

「か、悲しいですぅ」


 そんなぁ。錬金術師が少ないなんて……。


 ん。

 でもそれなら、錬金術師のお店屋さんも少ないってことになるよね!


 ふっふっふ。ライバルが少ないってことじゃないですかーっ。

 うん。頑張っちゃうもん!


「さて、ここまで販売スキルのご説明でしたが、続きまして──」

「ほえぇ! ま、まだあったぁっ」

「という訳でして、ホムンクルスをいかに早く錬成できるかが、錬金術師には求められます」

「ほ、ほえ」


 ホムンクルス──人工生命体。

 ギルドで販売されているエンブリオと呼ばれる核に、いろんな素材を混ぜて錬成して生み出せるパートナー。

 錬成に成功したホムンクルスは、エンブリオの状態のまま。

 エンブリオが卵みたいなもので、孵化させるスキルが『コールホムンクルス』。

 ある程度体力を消耗すると、自動的にエンブリオに戻ったりするんだって。そしたらまたこのスキルで呼び出さなきゃいけないの。

 もちろん任意でエンブリオに戻すこともできて、そのスキルは──ない。


「命令すればエンブリオに戻りますから」

「命令……お、お願いするのでもいいんですか?」


 わたしがそう尋ねると、ケミーさんが硬直。

 暫くして「それでもよろしいと思いますよ」と笑ってくれた。


 今の間、表情も一切動かなかった。

 時々こうやって、あ、NPCなんだなぁっていう瞬間がある。


 現実のようだけど現実じゃない。

 でもだからこそ、楽しいって思えるのかも。


 ながーいケミーさんの話を終えて、いざ冒険の旅に!

 って時に。


「錬金術師ギルドから仕事の依頼があるのですが、受けてみませんか?」

「お仕事ですか?」

「はい。報酬も弾みますよ」


 ほ、報酬!?

 お金貰えるのかなぁ。お仕事だもんね、アルバイト代ぐらいでるよね。


「受けますっ。受けさせてください!!」

「はぁ、よかったぁ。先ほども言いましたが、錬金術師が少なくって、依頼を受けてくれる方もいらっしゃらないから、溜まっていたんですよぉ」

「溜まって……」

「はいっ」


 眼鏡をキラーンっと輝かせるケミーさんを見て、なんとなーく嫌な予感がしました。






「えぇーいっ」


 ケミーさんからお仕事を貰って町の外へ。

 そこでまずはスライムさんをリボンでピシピシします。

 新体操のリボンでピシピシしたって痛くもなんともないんだけど、元が鞭だからちゃんとダメージ出るんだよぉ。


 二回攻撃で倒せるので、すっごく簡単。鞭って結構強いんじゃないかなー。

 そんなことを思っていると、近くでわたしと同じような、今日から始めましたって感じの人が剣でスライムさんを一突き!

 スライムさん、ぼわんって音と一緒に弾けちゃった……。


 け、剣って強いんだね。

 でもあのぶにゅっていうのは気持ち悪くて嫌。

 わたしはわたし!

 さぁ、頑張るぞぉー。


 スライムさんから『粘着剤』というアイテムを30個集める。

 それが一つ目のお仕事。

 あと時々スライムさんがおっことす『綺麗な石』が5個。これが二つ目のお仕事なんだけど……。


「石出ないよぉ~」


 鞭でピシピシピシピシ。

 粘着剤がそろそろ30個になるっていうのに、石1個しか拾ってないんだけどぉ。

 

 でも負けないもん!

 頑張って頑張って──石が5個集まる間に、粘着剤は129個になっちゃった……。


 さ、さぁ、次行こう!

 えっと、次のお仕事は……。


 お仕事の依頼を受けると、インターフェースにある『クエスト』っていう欄に内容が出てくるんだけど、それとは別にケリーさんがメモ紙をくれたの。

 行ったり来たりしないで済むようにって、メモには町から近い順にお仕事の名前が書かれていた。


 受けた依頼は全部で10!

 次はお花畑で花摘み。赤いお花、青いお花、黄色いお花、白いお花を、それぞれ50本ずつ!


 モンスターが落とすアイテムは、拾おうとして触ると消えちゃって、その時点で自動的にアイテムボックスに入る仕組み。

 でもお花はどうなるんだろう?


 お花畑まで行って赤いお花をまず摘み取ってみると、プチって摘んだ瞬間に光になっちゃった。


「アイテムボックス──」


 人差し指をつつぅーっとしてアイテムボックスの画面を開くと、収集品ってタブの一番下に『赤い花』のアイコンが。

 ほほぉ。これが楽ちんですねぇ。


「よぉし。さっそく禿散らかしちゃうぞーっ」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 錬金術師は、薬師と効果で勝負せずに、 守備範囲の広さと手順の簡易さで勝負する職業なのかな? 最初にやった装備の自由な変形を見る限り、 性能に影響ないのなら、むしろ自由度無限に高そうに見えます…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ