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隊長と私   作者: Michelle
13/18

視察

 演奏会から2ヵ月が過ぎた。

 ケイトのいる第一中隊に新しく新人の女騎士が配属になり、ケイトは王太子や第三王女の護衛につくようになっていた。新人の名前はメアリという。メアリに、ケイトがしていた事務の仕事を引き継いだので、護衛の仕事が入るようになったのだ。


 今回、王太子殿下は新しくできた病院施設の視察に行くことになった。同行する騎士は10名。護衛は第一中隊に任された。

 先頭の馬にはアーサーが騎乗し、隊列を先導する。馬車は王太子の乗る馬車と従者の馬車が2台。最後尾にケイトとギブス副隊長がついた。隊列がカーブに差し掛かると、ケイトの位置からも先頭を行くアーサーの姿が見えた。相変わらず騎士の鑑のような姿である。

 ケイトは、なんだかひどくアーサーが遠いような気がした。


 アーサーとケイトは相変わらず上司と部下の関係だった。

 アーサーは演奏会からの帰りの馬車の中で、嫉妬のあまりひどいことを言ったと、次の日ケイトに謝った。

 アーサーとディアナは二人でエリックの演奏会に行くはずだったのに、エリックに押し付けられてケイトを連れて行く羽目になった。帰りは帰りで、アーサーを置いてディアナはエリック達と打ち上げに行ってしまった。きっとエリックが無理矢理誘ったんだろう。せっかくのデートを、ケイトとエリックのキャンベル兄妹にとことん邪魔されたのだ。それで機嫌が悪かったんだろう。ケイトはそう納得していた。


 ケイトの仕事がメアリに引き継がれた為、 最近はアーサーと一緒にいる時間が少なくなっている。今日、アーサーが視察に同行したのは特別のことで、同じ任務につくのは久しぶりだった。


「まもなく到着ですよ」隣のギブス副隊長が言った。ケイトは改めて姿勢を正した。


 程なくして、一行は視察予定の病院につき、王太子殿下が馬車を降りた。


「やあ、ケイト。元気にしてる?」


「おかげさまで」


王太子殿下とのやりとりも段々と慣れてきた。

 王太子殿下はここで2時間、視察される。その間、ケイトは控え室で待機となった。待機中の騎士達と雑談する。皆第一中隊の隊員なので気心が知れている。アーサーは視察に同行しているのでここにはいない。


「近頃、王城では王太子殿下のお妃選びの話が噂になっているそうだ。内務の知り合いの話では、候補になりそうな令嬢のいる貴族に、内密に打診しているらしいぞ」


「ハンス王子が王太子になられてもう3年ですからね。早くお世継ぎをと周りが姦しいのですよ」


「殿下には恋愛の自由がないらしい。お気の毒なことだ」


「恋愛の自由があるのに相手がいない、お前もお気の毒だがな」


皆がどっと笑った。


 そんな騎士達の噂話に耳を傾けながら、あのキラッキラの王太子殿下のお妃となるのはどんな人なのだろう。それにしても恋愛も勝手にできないなんて、天上人には天上人の悩みがあるのだなとケイトは思った。


控え室にアーサーが入ってきた。王太子殿下の視察が終わったので、しばらく休憩を挟んだ後、帰りの途につくという。


「ケイト、護衛の仕事にはもう慣れたか?」


「はい。大丈夫です。メアリはどうですか?ちゃんと引き継いだつもりですけど、うまくやれてます?」


「そうだな。メアリと君は2つしか年が違わないはずなんだが、毎日世代間のギャップを感じているよ」アーサーが苦笑した。


ケイトも若いつもりでいるが、たしかにメアリは学校を出たばかりで、今ドキっぽい話し方をする。


「王太子殿下の視察にはディアナさんが来られると思っていたんですが、今日は来なかったんですね」


「ディアナは、今は殿下の護衛からは外れている。実は内密に異動の話が出ているようなんだ。ケイトはディアナから何か聞いているか」


「いいえ。特には...」


「そうか...」


ディアナのことを心配するようなアーサーの様子にケイトの心が軋んだ。






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