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8.着火剤が無いと上手く炭に火を点けられないんだよなあ

 店内は変わらず暗い。


 今だ停電しているようだが見えないこともない。


 人の気配はなく悲鳴や叫び声は聞こえてこないな。


 壁に手をつきながら、ゆっくりと周囲に注意しながら移動する。


 一晩明けて店内はどんな状態なのか? 自分以外に生き残っている人がいるのだろうか。


 俺が助かったのはほぼ運が良かっただけだ。


 ……と、いけない!探索に集中しないと。



 とりあえずだが、今回探索の目的とする場合は決めている。


 トイレのドアにはRー3と書かれており、パンフレットに載っていた店内地図で現在位置が把握できた。当然、どこにどのような商品があるのか記載されていた。


 飲食料品売り場は一階の離れた場所にあるため断念する。


 そこで、あまりトイレから離れておらず、それでいて食料品があるかもしれない場所。


 それは――――


『アウトドア・キャンプ用品コーナー』


 である。


 携帯食とか置いてありそうだし、その他にも役立ちそうな…………


 タッタタ、タッ。


 その時、俺の耳がすこし離れた商品棚の向こうから、固い床を駆けてくる足音を捉えた。


 肉体だけじゃなく、五感も強化されたのだろうか?


 黒い影が姿を現したかと思うと、自分に向かい勢いを殺すことなく跳ねるように突進してくる。

 

 そのまま、3メートル程手前で跳躍したのは1つ目の最初に倒したのと同じモンスターであった。


 俺を地に這いつくばらせようと飛びかかる動きがよく見える。


 モンスターの醜い顔も、両前脚の爪も、蠢くキバも、はっきりと目で追うことができた。


 だからどのように身体を動かせば良いのかも考えることができた。更には自然と身体も反応する。


 前に出して構えていたバールを持つ右手と右足を大きく後ろに引くことで半身になり、1つ目モンスターの爪と牙を躱す。


 床に1つ目モンスターが着地した瞬間に上半身を捻りながらバールを斜め下から1つ目モンスターの左側頭部に向けて振り抜いた。


 皮を破り、肉を千切り、頭蓋を破り、バールのL字の鋭利な先端が、食い込み離さない。


 俺は手ごたえを感じると振り抜いた勢いを殺さず、バールを担ぐように肩に乗せて背負い投げの様にモンスターを振り回して、床に叩きつけた。


 叩きつけた拍子にバールが外れ、一つ目モンスターは一度バウンドして壁にぶつかった。


 だが、それでも顔を起こそうとする。


 俺は大きく踏み込んで、1つ目モンスターの顎をバールで救い上げて横方向に振り回して壁に打ち付けた。


 鈍い肉が潰れる音とともに、壁に染みを作りながら床に力無く、その体を横たえた。


 しばらくしてモンスターが溶けて変わり果てた小さな石を拾う。


 ゲーム風に言えば、ドロップアイテムか?まあ、使い道はわからないが、これもどこかで役に立つのかもしれない。


 周囲を見渡して、再び移動を再開する。


 それにしても驚いた。


 まるで自分の身体では無いような感覚。


 俺より確実に重量があるであろうモンスターをバール一本で振り回すことができる腕力。


 遠くから駆けてくる足音を聞き逃さない聴力。


 以前なら明るい場所などあっても、目で追うことすら難しかったのではないかと思う、モンスターの動きをしっかり捉えた動体視力。


 それに対応できる反射神経。


 あれだけ激しい動きをしたのに、僅かに息が乱れるだけだ。


 体力も比べ物にならない。


 本当すごい。


 これがレベルアップしてステータスが上がった恩恵なのだろうか?


 正直、こんな状況で不謹慎だとは思うけど、まるで物語の主人公にでもなった気分だ。


 これで魔法でも使えたら…………。


「メ〇! ファ〇ア! アギ〇オ!」


 何もおきない。


 まあ、できたら逆に大変だけどな。火災的に。



 と、着いたか?


 モンスターとの遭遇は一回だけで目的の場所に到着する。


『アウトドア・キャンプ用品コーナー』

 

 開けたスペースにテントやタープが実際に広げられ展示されている。


 見て回るのも苦労しそうな広さに商品量だ。


 だが、アウトドアコーナーの中央部分に忙しなく動く複数の黒い影。


 その近くには積み上げられた、人だったもの。


 実のところこの場所に来るまでにもいくつかの人の死体を見かけていた。息はないか確認したが、残念ながら事切れていて、黙祷くらいしかすることくらいしかできなかった。





 積み上げられた数人の死体の回りで「ゲギャ、ゲギャ」と聞き取りにくい声を上げいるのは、緑色の子供の様な体躯をした大きな口に長い鼻と耳が特徴的な二足歩行の生き物だ。


 しかもどうやったのか焚き火をしてやかる。


 スプリンクラー仕事しろ!


 停電だと駄目とかじゃないよな普通。


 それにしてもなんて言ったか、名前が出てこない。スター〇ォーズのヨー〇みたいな、あー、あれだグレムリンだっけ?


 おれは棚の影に隠れて、様子をうかがう。


「ゲギャ」しか発声していない気がするが、どうやらコミュニケーションを取れているらしい。初めて出会う人以外の知的生命体だ。


 もしかしたら、人の死体を集めて弔ってくれている可能性だってゼロではーー


 いや、ゼロっぽい。


 人を喰う為かとも思ったが、あいつら死体て遊んでやがる。


 見ていて吐き気を催す行為を大きく裂けた口を更に広げ愉快そうに笑いあっている。


 アイツらは俺の、人の敵っぽい。というか敵認定する。


 グレムリンは全部で5匹。


 おっ、1匹が焚き火から離れていく。


 グッとバールを握りしめて、息を潜めながら、ゆっくりと近づく。ガサゴソと棚を漁るグレムリンの背後に移動して、振り上げていたバールを脳天に叩きつけた。


 声を上げることもなく、倒れたグレムリンも他のモンスターと同じ、最後には小さな石になったので拾っておく。


 あと、ナイフか。サバイバル用のナイフかな?


 倒したグレムリンはサバイバルコーナーのナイフを持っていたようだ。


 とりあえず拝借するが、あのグレムリンが持っていたものと考えるとちょっと嫌だけどね。





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