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43.カエルとゾウとまるまじろ?

「ありかとー! かいとおにーちゃん」


「本当に何から何までありがとうございます」


俺は「気にしないでください」と答えながら、簡易入口機能を使って壱号基地に移動し、アウトドア用品コーナーから持ってきた新しい着替えを二人の側に置いて、ビニール袋のゴミを回収していく。


 俺が服を取りに行っている間、2人にはウェットティッシュや水なしシャンプーで汚れを落としてもらっている。


 小羽ちゃんはさっぱりしたのが嬉しそうに終始ニコニコと笑顔で、飛び跳ねる様に新しい服を手に取っている。


 うん。子供は笑顔が一番だな。


 血まみれだった春陽さんも問題なさそうだ。一応棚に挟まれた足は瑠璃に教えてもらった通りに固定してある。小羽ちゃんに手伝ってもらえば着替えも出来るかな。


 あと、経口補水液やゼリー状の栄誉補助食品や、ドロリと甘い高カロリーの飲み物を渡す。


 どうやら2人ともこの数日まともに食事していないみたいだからな。いきなり固形物とか体に良くはなさそうだと思い胃に負担が少なさそうな食料をチョイスした。


「じゃあ2時間くらいしたら、また伺います」


「はい。わかりました」


「うん!」


 元気な小羽ちゃんの声を背に俺は事務所から出て楽園に移動する。







「…………………つ、疲れたあああ!!」


 どさりとマットに倒れ込む。


 巨大擬態カエルモンスターから始まり、完調とはいかない状態で小羽ちゃんと会って、弐号基地に連れて行き、小羽ちゃんのおかあさん救出する為に一つ目モンスターとやり合い倒しながら駆けつけ、巨大三つ首一つ目モンスターとの死闘。


 そのあとも弐号基地と寝具コーナーを往復。壊れたバリケードの修復やら準備をして、小羽ちゃん達を移動。そして今に至る。


 ゴロンと仰向けになる。


 これからどうしようか?

 

 情報の擦り合わせを春陽さん達として、今後の方針をどうするか決めないとだな~。春陽さんの足のこともあるし、…………小羽ちゃんの能力についても確認しないといけないよな。


 だけど……………少し休もう。身体が保たん。


 頑張ったよな俺。



 楽園温泉に入った後、仮眠をとった俺はギシギシと痛む体で、春陽さんと小羽ちゃんが待つ弐号基地に戻った。



 ドアの前のバリケードを退かし、ノックをして入室する。


 室内には着替えと食事を終えたらしい2人が床に敷いた布団の上で寛いでいた。


 俺がドラッグストアコーナーである弐号基地で見つけたカエルやオレンジ色をした象のキャラクターの小さな人形や、今は普通の人形である『まるまじろのデミちゃん』達で遊んでいる小羽ちゃんとその様子を眺めていた春陽さん。


 俺は春陽さんの向かいに腰を下ろした。チラリと視線を春陽さんに向けると目が合う。


 な、なんだか緊張するな。落ち着いて人と話しをするの何日ぶりだろう。


 そんな内心を押し留めて、努めて冷静に声を掛ける。


「あ、あの~、足のいたみりゃ………ごほん」


 ………噛んでないぞ。少し唾が気管に入っただけなんだ。




 んで、正直お互いに探り探りといった感じだが幾つか確認出来た。


 まず、春陽さんの足の状態だ。


 今は固定しており、布団の上で足を伸ばして休んでいるが、動かさなければあまり痛くないらしい。ただ気を抜いて動かしてしまうと結構な痛みがあるとの事で、無理は出来そうにない。それを聞いて一応市販薬の痛み止めを飲んでもらった。


 それと少し前に春陽さんか倒れたと小羽ちゃんから聞いていたが、今は食事を取り落ち着いていると本人は言っているし、寝具コーナーで見た時よりも顔色は良さそうだ。


 次に、2人は寝具コーナーのあの作業場にずっと隠れていて、他の生存者とは出会っておらず、現状に対する情報は殆ど持っていなかった。あと、春陽さんはシングルマザーで2人家族らしく、今後どうしたいと予定はすぐに思い浮かばないようだ。


 そして最後に小羽ちゃんの力については何も分からないらしい。あの時初めて春陽さんも『巨大化した人形』を見て驚いたとなんとも言えない顔をしていた。ちなみに春陽さんは視界の端にステータス表示が見えるのだと思い詰めた様子だったので、以前出会った人も同じようだったと伝えると安心した表情を見せた。


 あっ。


 小羽ちゃんがうとうとし始めた。本当はデミちゃんについても本人から色々聞きたかったんだけどな。色々と疑問があるんだが…………春陽さんも目を眠たそうにしばたかせているし、今日はここらでやめておきますか。無理する必要はないだろう。


 ぶっちゃけ俺も眠いしね。


「じゃあ、今日はそろそろ休みましょう。私はドアの外で休みますので、何かあれば呼んでください」


 俺はそう言って立ち上がるとドアに向かうが、ふらついた足がポコンとまるまじろのデミちゃんに軽く当たる。


 おっといけない。倒れたデミちゃんを拾い上げた。


「ん?」


 まるまじろのデミちゃんの足にラミネートされたタグが付いているのが目に入る。




『じゅうくろきこはね   でみちゃん』




 『ち』が逆さまなのは愛嬌だな~。


 何の気なしに俺はタグをひっくり返した。




 『ワクワク動物シリーズ No.034 オオアリクイ』


 


「………………………………………………はい、小羽ちゃん。まるまじろのデミちゃんをどうぞ。…………じゃあ、おやすみなさい」


「ん。おやちゅ………………」


 デミちゃんを受け取った小羽ちゃんは最後まで挨拶を言えずにコテリと天使の笑顔で眠る。微笑ましいな。


 そして春陽さんと目が合う。


「アルマジロ売り切れだったんです」


 少し照れたように呟いた春陽さんであった。

新年あけましておめでとうございます。

今年も本作品をよろしくお願い致します。


ブックマーク・評価を首を長くしてお待ちしております。


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