31.もし、私に何かあったなら、パソコンのハードディスクだけは破壊してほしい。貴方が死亡時にパソコンを破壊する、そんな保険は無いかなあ。
暗闇。
これといった灯りも無い中での、モンスターとの戦闘。
普通に考えたら、人よりもモンスターに有利に働きそうなものだ。
商品棚に左右挟まれた通路。
前と後ろから2匹づつのカエルモンスターが俺目掛けて駆けてくる。
挟み討ちってやつだな。
アホみたいにヨダレを撒き散らしながら、大口開けて、今にも飛びかからんと、速度を上げる。
多分同時に仕掛けてくるのだろう。連携した動きだ。
それに、どこかで擬態カエルモンスターも隙を狙っている筈。
ピンチだ。
斧を構えて握る手に力を込める。
本来なら……な!
「はっはっはっはぎゃ!? ぎゃん!!」
突如、空中に投げ出される様に回転して頭から勢いよく床に顔面から突っ込む、計4匹のカエルモンスター。
上手くいったぜ!
別に簡易転送の落とし穴を使った訳でもない。あれは自分も引っかかりそうになるからな。
それにしても、コイツら足元がお留守というか、目が三つも付いてる割に、多分レベルが上がって暗闇でもよく見える俺よりも、暗さに目が対応していないんじゃねえか……なっ!!
斧で次々に床に這い蹲るカエルモンスターを仕留めて行く。
「からん」
更に、商品棚に仕掛けた、簡単な鳴子が揺れた。
はい! いらっしゃい!! そして、さようならだ!
「ふい~」
疲れた。本日三度目の戦闘。
だが思っていた以上に上手くいったな。
カエルモンスターの気配がある場合まで近づいて、この罠を設置した箇所まで誘導する。
商品棚のあちこちに仕掛けた鳴子は擬態カエルモンスターの位置を知らせてくれる。
そして、カエルモンスターが引っかかった罠。こんなにも効果があるとは思わなかったぜ。
カー用品コーナーの塗装スプレーで黒く塗った、ワイヤー入りのビニールホースが、棚と棚の間に張られている。
最初擬態カエルモンスターとの戦闘で、鳴子に引っかかっていたから、もしかしてと思ったんだが見事効果ありだ。
ちなみ、鳴子もビニールホースの罠も取り外し可能に出来ている。金属製の商品棚に引っ掛けられるように改良してある。カエルモンスターを罠の位置に誘き寄せて、倒したら罠を取り外して、先の棚に取り付け繰り返す。
かなりゆっくりな進みにも思えるが、高谷さんな話だと、カエルモンスターは結構数がいそうだったからな。ドラッグストアコーナーに着くまでに、敵さんの戦力を削っておきたい。
それに、大人ひとりを丸呑みするくらいの、それでいて見えないモンスター。
たぶん、いるんじゃねえかなあ、ドラッグストアコーナーに、ハイゴブリンみたいな、ボス的なモンスターがさ。
見えないってことは擬態カエルモンスターかも知れないが、アイツら大きくは無いからな。
今の所はドラッグストアコーナーには、擬態カエルモンスターのでっかくて、擬態も完璧バージョンのボスっぽいのがいるんじゃねえかと予想している。それプラス何か特殊な力もあるかもしんないし。
情報は少ないが、それでも高谷さんが伝えてくれた貴重な情報だ。
辺りにモンスターの気配なし! 先に進みますか。
ちなみに、ビニールホースの罠の棚に引っ掛ける部分は瑠璃が作った。あの脚でビビるくらい器用だからなあ。
魔石を拾い、罠を回収して、少しづつドラッグストアコーナーに近いていく。
現れたカエルモンスターがビニールホースの罠ですっ転び、鳴子に引っかかっる擬態カエルモンスター。
危なげなく勝利する。だが………。
ほんの少し違和感。
これまでとの僅かな違い。気のせいか?
カエルモンスターの唾液がかかった服の一部が手触りが違う、ザラザラしていて、今にも穴が空きそうになっている。酸でも混じってんじゃないか?でもこれまでそんなことはなかった筈だ。何度か唾液掛かったもんな。
それに擬態カエルモンスターの周囲との同化も前より分かりにくい気がする。動きも素早く、器用になっている様な………。
………………ちょっと強くなってない?
嫌な予感しかしねー。
唾液掛からないように注意しよ。
といっても、もうドラッグストアコーナーは目と鼻の先だ。カエルモンスターも打ち止めなのか現れなくなった。
今日はここまでだな。
基地に戻ろう。それに良いものを手に入れたからな。
楽園温泉から上がると、食事を取る。
殺伐とした1日の疲れが、癒されていく。
さっきから楽園の荷物をごそごそといじっている、瑠璃もご機嫌の様子。
ATMコーナー近くにあった旅行代理店のコーナー奥から失敬したノートパソコン一台。
楽園に転送しておいたのだが、いつの間にか無くなっている。
食べたのだろう。瑠璃よりデカイパソコンだったんだけどな。
まあ、瑠璃に喜んでもらえたならいいか。
ちなみにレベルは、やっと1レベル上がった。
魔石ポイントはあとちょっとで溜まる。
中々不安ではあるな。
レベルが上がらないと、ステータスは伸びないし楽園の機能も解放出来ない。
魔石ポイントは着実に溜まっていくけど、戦闘自体に直接関係する機能は今の所解放されていないし、別の何か戦う力を強化していきたい。
マットに寝転がる。
それにしても、楽園内も色々物が増えたな。
罠に役立ちそうなものを色々運んだから、使わないものは外に出さないと。
もし、デカイ擬態カエルモンスターだったら、それとも別のモンスターだったら、どう戦おうか。
取り敢えず無い頭を振り絞りましょうか。
気合いを入れて、トイレを済ませた。
飯も食ったし、装備もバッチリだ。
基地に置いてある、鏡で自分の顔を見る。
気合いの入ったいい顔だ。だれも言ってくれないからな。
………………………………う〜ん。
自分の顔を見て思う。やっぱり………………まあ、いいや。
今日はいよいよドラッグストアコーナーに本格的にちょっかいを出す。
作戦もいくつか考えた。成功するかはわからないけどな。無いよりマシだろう。
そんじゃあ、楽園に移動して瑠璃に挨拶したら出発だ。
楽園に移動する。
あれ?
何時もはすぐに近づいてくる瑠璃が、チラリとこっちを見て、何かしている。
寂しいな。
あっ、近づいてきた………………………ってそれなんだい?
俺は瑠璃の液晶に器用に乗せられた何かに目が奪われた。
憂鬱な月曜日を乗り切ろう!
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筆者の憂鬱が吹き飛びます。