15.後ろポケットにシール蓋のウエットティッシュを入れたまま座って、液がじわっとズボンとパンツに広がった。そんな夏の日の夜
遅くなりましたが、少しでも楽しんで頂ければ幸いです。
「………………………」
車のフロントガラス用の日よけカバーにくるんだ、子供の遺体を商品棚の奥にそっと置いて、黙祷する。
意味も無い、ただの自己満足だとわかっちゃいるが、仕方がないんだよ。何もせずにただ通り過ぎるなんて事が出来る程、神経太くは無いんだ。
しばらくその場に佇む。足が重たいのはハイゴブリンとの戦闘による疲れだけじゃないんだろうなあ。
だが、いつまでも立ち止まっちゃあ居られない。
俺は気持ちを切り替えるべく頰を両手で軽く張って、小さく膨らんだ日よけカバーに背を向け『キャンプ・アウトドア用品コーナー』に足を進めた。
「結構な量になったな」
集めた物資の山を前にちょっとだけ罪悪感。
流石に火事場泥棒とは違うが、お店の商品勝手に使いまくっているからなあ。
まあ、緊急避難ということで、許して欲しいな。
取り敢えず、食料品にしろ医療品にしろ、全部持っていくのは控えておくことにした。
もしかしたら、他に生きている人がいるかもしれないからな。
荷物を抱える。じゃあ、一旦楽園に移動しますか。
「ただいま」
ピョン、ピョン。
蜘蛛タブレットがカタカタと近づいて、俺の周りを跳ねる。
は~、なんだか和んだ。
ハイゴブリンとのあれこれで気分がささくれだっていたからなあ。
「うん?」
今度は、ジーンズの裾にコンパス脚をひっかけて、心配そうに見上げてくる。
「大丈夫だよ。ありがとさん」
しゃがんで、液晶をひと撫でする。蜘蛛タブレットが何を思っているのか分からないけど、なんだか今はこの言葉が、正解な気がした。
さて、予定通りに頑張りますか!
まずは、ステータスの確認だな。
蜘蛛タブレットを持ち上げると見事変型して、ただのタブレットPCに早変わり。
=== === === === === === === === === === ===
宮崎 海斗 レベル14
生命力:188/188
体力: 164/180
状態:健康 疲労(小) 空腹:(小)
レベル:10→14
生命力:150→188
体力:142→180
力:62→71
頑強:27→29(+2)
反応速度:38→44(+2)
治癒力:26→28
抵抗力:16→17
スキル
楽園創生:レベル3
[スキルポイントが残っています 残:17P]
楽園内効果
疲労回復(微) 治癒力増加(小)
ナビゲータ進化レベル1
装備
血濡れたシャツ:頑強+1
ボロボロのジーンズ:頑強+0
洗っていないスニーカー:頑強+1 反応速度+2
不潔な靴下:頑強+0
不潔な下着:頑強+0
バール(小):攻撃力/12
薪割り斧(大):攻撃力/58
=== === === === === === === === === === ===
うおー!
一気にレベルが上がったな。倒したのはゴブリン5匹にハイゴブリン1匹。やっぱりハイゴブリンがデカかったんだろうな。
あと1レベルで15か。楽しみだぜ。
15になったら機能を色々と解放しよう!!
さて、お次は今回ある意味メインになるイベント。
衣類の着替えだ。
ぶっちゃけ今の着ている服、ホントに酷いからな!
服は柄かと勘違いしそうなくらい、血で染まっているし、ジーンズは片脚が丸出しでちょいハイセンス。36歳……ぶちゃけ恥ずかしい。
自分じゃあそこまでわからんが、多分匂いも大変なことになってるだろうし。
4月だがら、そこまで暑くは無いけど流石にきちんとした服着ないと身体おかしくなるんじゃねえか。そもそも衛生的にアウトだろう。精神的にも萎える。
つうことで、さらば洋服達よ。
まっぱになった。心地よい開放感。
そして、引き締まった肉体美。グッとチカラを込めると、大胸筋がピクピクッと動く。お、面白い~!! 鏡が無いのが、残念だ……………といけない。
遊んでいる暇は無いのだ。
まずは、コイツで身体を拭こうか。
『カラダ拭き用、マジ大判 ウエットティッシュ』
全身を拭くことが出来る厚手で一枚が大きいウエットティッシュだ。というかティッシュじゃなくて布ぽいな。
化け物や自分の血、そして汗の汚れをふやかしながら、マジで大判のウエットティッシュで拭き取っていく。
「お、おう……」
すぐに真っ黒になった。
もう一枚取り出す。
流石の拭き心地。お風呂に入れない人や、病気や介護が必要な人にもオススメと書いてあるだけのことはあるぜ。
数日分の汚れが、どんどん落ちていく。
おふぅ~。スースーして、気持ちがいいな~。
足の指の間まで綺麗に拭き取り、ついでに髪の毛もガシガシ擦っておいた。
………………頭は洗いたいな。
でも水は無駄使いできないからな。我慢だ、我慢!
次は登山用のインナーと下着を履く。
………。
俺は感動している。
わかるだろうか。ピチッとした肌着がター〇ンの表紙を飾れるくらい似合うボディになったこの感動。
「………………」
ジッと蜘蛛タブレットが見つめていた。
はい、すみません。真面目にします。
次にズボンだ。俺は決してパンツとは言わない! 理由は何となく恥ずかしいのだから仕方がないじゃないか!!
そして、履くのは、『トレッキングパンツ』
………………。
タグに印字されているんだもん。
撥水や速乾に優れていて、丈夫で汚れにくくストレッチ素材だから履き心地バツグン!
と手書きPOPに書いてあった。本屋みたいだけど、店員の商品に賭ける愛情がヒシヒシと伝わったよ。
履いてみる。
おー。
裾は少し長いがサイズはピッタリだ。
屈伸したり、足を上げたりしてみるが特に問題はなさそう。
同じ種類のトレッキングパンツを持ってきたから、替えも安心だぜ。
くいっくいっ。
ん?
蜘蛛タブレットが………………裾直しをし始めた!!
ホント、ありがとう。