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14/43

14.スーツにリュックサックがどうしても見慣れない。機能的なんだけど不思議なものである

 床を打ちつける激しい音が響く。


 突進しながら、俺を叩き潰さんと振り下ろされた棍棒。


 なんとかハイゴブリンの一撃を躱して、俺は距離を取った。


 なんつうものを振り回しやがる。よくよく見りゃああのハイゴブリンの武器、棍棒の様な形をしているが、剥き出しの鉄筋が所々から飛び出したコンクリートの塊じゃねえか。


 とんでもない怪力だ。


 床はひび割れて陥没している。


 ………マジでおっかねえ。


 足が震えていた。


 だが両腕の中の冷たい存在に、震えは止まり、逆に怒りが込み上げてくる。


 落ち着け俺。焦るなよ。冷静に、冷静にな。


 にやにやと嫌らしい笑いと言った表現が当てはまりそうなハイゴブリンの表情。


 腹にはグツグツと煮えたぎる感情がどんどん渦巻いているが、冷静さを無くせばクソ外道野郎の思う壺だぞ。


 床にそっと子供の亡骸を置く。


 ハイゴブリンと俺が駆け出すのはほぼ同時。


 右から左へと振り回された鉄筋コンクリの棍棒を躱す。当たれば骨など簡単に砕けてしまいそうな質量の塊に足が竦みそうになるのを堪えて前にでる。


 斧を手放してしまったので手にしているのはナイフ一本。避けざまにハイゴブリンの脇腹を切りつけるが………手応えに舌打ちしたくなる。


 血は滲んでいるが堅い筋肉の表面をキズつけただけ。


 下手にナイフを突き立てても折れてしまいそうだ。


 脇腹の傷など気にした様子も無しに平然と棍棒を振り回してきやがる。


 距離を取りながら、隙を見てナイフを振るう。だがリーチは圧倒的にハイゴブリンに分がある。


 人生で刃物を振り回した経験など殆ど無い俺がまともにやり合えるわけがない。


 横に斜めに上から下に振り回されるコンクリ棍棒の勢いは止まらない。


 壁や床が破壊されていく。



 ハイゴブリンの野郎は息が切れた様子もない。


 体力も力も頑強さも絶対に俺よりも上なんだろうな。とんでもない化け物だ。


 うお! 危ない。今掠ったぞ。


 しかも、筋肉ダルマの巨体にもかかわらず、動きも決して鈍重という訳じゃない。

 

 振り回す鉄筋コンクリの棍棒も動作が大きいから、躱すことができてはいるが、ぶっちゃけ一撃もらえば終わりなんじゃねえかと、こちとら必死なんだがな。


 今度は右手の太腿にナイフを走らせるが、深手を負わせるには至らない。


 っあ!? 突然振り回しから突きを繰り出しやがった。


「はあ、はあ、はあ」


 ホント不味いぞ。こっちは肩で息してるってのに、ハイゴブリンは疲れた素振りなどなく悠然と肩に棍棒を担いでこちらの様子を見ていやがる。


 一旦退却するか?


 恐らく足は俺の方が速いと思うが、背を向けた途端あの棍棒が飛んできそうだな。


 頭の中で考えを巡らせるが、突然ハイゴブリンが俺を指差す。


 何だ?


 そして次に自分の胸元の首飾りを指差す。


 人の頭程の大きさをした丸い何かが数珠繋ぎになったもの。


 その数珠のような丸いものには、目があり鼻があり口があった。


 そして一様に苦悶の表情を浮かべているように見える。


 ハイゴブリンは次に子供の亡骸を指差して、再び首飾りを指差し、ゲギャア、ゲギャと笑う。


 何を言っているのかは分からないが、碌でもないことなのは想像がつく。


 撤退はキャンセルだ。こんちくしょうめ。




 頭上を通過するコンクリ棍棒。


 腕を背を尻を斬りつけるが、駄目だ。最初に傷つけた脇腹とかもう血止まっているし!


 ジリ貧だ。


 考えろ。何か突破口はないか?


 ハイゴブリンが一際大きく振り上げる。


 デカイのが来る!


 隙を突いて今度は股間を狙ってみるか?


「……っ!? しまっ………」


 コンクリ棍棒の振り下ろしを狙おとした俺の動きを読んでいたように、途中で棍棒を止めやがった。


 不味い! フェイントだ。


 軌道を変えて襲い来る棍棒。


 だが、自分でも予想していなかったガクリと膝が落ち、態勢を崩した事で、運良く棍棒は頭ギリギリを通過していく。


 あ、危なかった。


 ハイゴブリンの攻撃で破壊された床に足を取られたようだ。


 バタバタと慌てて距離を取ると、顔を歪めてハイゴブリンは笑っていやがる。余裕ぶっこきだ。


「…………」


 だが……ひとつあのハイゴブリンに一泡吹かせられるかもしれない案を思いついた。


 やれるか? ……いや、やるしかない!


 その為にはいくつかやらなきゃならん。


 まずは―――


 俺はハイゴブリンを翻弄すべく激しく動き回る。体力は考慮しない。


 動きの変化に少し戸惑う様子のハイゴブリン。


 ……よし!今だ!!


 ハイゴブリンの顔面めがけて大きくナイフを振りかざして飛び込む――――と見せかけて、足元にスライディング。


 コンクリ棍棒で、顔面をガードしようとしたハイゴブリンの死角になっている様子。


 俺は両手でナイフを持ち床にスライディングした態勢のまま、ハイゴブリンの右足の4本指、一番大きな親指に向けて振り下ろした。


 異形な親指が、足から離れて転がっていく。ぼたぼたと血が溢れる。



「ゲギャアアア!?」


 これまでとは異なる叫び声。


 もう一本いけるか?


 だが怒りの形相のハイゴブリンと目があった。


 次の瞬間には俺は蹴り飛ばさ床を転がり滑る。


 痛って~!


 け、けど………。


 ハイゴブリン足を引きずりながらもコンクリ棍棒を振りかぶり突進してくる。


 ………作戦通り!!!



 そして今まさに、床に倒れている俺に向けて大きくコンクリ棍棒を振り下ろそうと、大きく左足を踏み込んで――――――


「ゲ、ゲグギャ!?」


――――――左に大きく傾いてバランスを崩すハイゴブリン。


よし! 成功!!!


 左足が膝下あたりから無くなっている………訳ではなく、ちょうど左足もとの床が無くなって膝下まで足が沈んでいる。


 楽園への物資転移機能である『簡易収納』。


 床に手をついて床を転移。重量オーバーにて俺の選択した箇所のみを楽園に転移してやった。


 突然のミニ落とし穴に驚いた表情のハイゴブリン。


 ここだ!


 俺はリュクサックから取り出す!


 それは………攻撃力12のバールだ!!


 俺は素早くハイゴブリンの右横に転がり、バールのL字の先端を、右足のアキレス腱に打ちつけた。


 鋭利な二股の先端が皮膚を突き破って肉に食い込む。


「ゲギャアーー! ゲ、ゲギャオ!」


 うるせえよ!


 俺は立ち上がりながら思いっきりバールを引く。


 左足は床に沈み、右足はバールで持ち上げられた、ハイゴブリンは前のめりに倒れ込み、床を舐める。


 それでも、コンクリ棍棒を支えに巨体を起こそうとして俺と目が合う。


 足の指に床落とし穴、バールでの態勢崩し。だがそれらはコイツを手に入れて、ヤツに致命の一撃を入れる為の仕込みだ。


 既にハイゴブリンにはあの嫌らしい笑みは無い。


 黄色く輝く瞳に俺がここまで誘導した本命である薪割り斧を振り下ろす姿が写ったのは気のせいか。


「グギャーーーー!…………グ、ゲ!………………ギャ……………………………」



「は、はあ〜。疲れた」


 これまで見たことのない大きさの魔石を拾って、座り込んで呟いた。


 マジで、しんどかったぜ。


時間があれば、度々更新して総合評価やアクセス数を見てしまいます。


ニマニマしているので、人にお見せできない顔です。


『どっきり!! 大成功』と看板が出てこない事を切に祈っています。


それでは今後ともよろしくお願い申し上げます。


出てきたら泣く!!

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