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13.車の芳香剤の瓶の底のシールを張り付けるのに緊張してしまう。結果上手くいかない

「よし! 」


 膝を曲げ伸ばしする。


 太腿に痛みは無い。よしよし、傷跡は僅かに残っているが、違和感なく動けるぞ。


 3日分あった非常食がちょうど無くなってしまたが、同時に足も無事治ったようだ。医療知識とか皆無だけど、楽園の治癒力促進(小)って凄いよな。どう考えても3日程度で動けるようになる傷じゃなかったと思うんだが。


 ちなみに今日までの食料の管理は蜘蛛タブレットがしてくれました。つまみ食い禁止だったよ。まあ、そのお陰で、今がある訳だし、本当に感謝している。


「そいじゃあ、行ってきます」


 背中の液晶には無人のトイレが映している蜘蛛タブレットが、クイっと片脚をあげてくる。


『行ってらっしゃい気をつけて』と勝手に脳内再生してみた。案外当たっているかもと思いほんわかする。


 楽園から外へと意識を切り替えると、俺は楽園からトイレに転移していた。一瞬のことである。厨二的な詠唱とかスキル名とか必要ないのが少し寂しいと感じる少年の心は大切にしたい。



 右手には薪割り斧。腰のベルトにはバール。


 背には空っぽのリックサック。


 もう一度、屈伸をしてみる。大丈夫そうだ。では物資調達に出発しますか!!



 棚バリケードを潜り抜け、床に落ちていた鉈とナイフを回収しておく。


 目的地は前回と同じく、アウトドア、キャンプ用品コーナーだ。

 

 色々役立つものが揃っていたからなあ。


 食料品に衣類、応急処置キットも使い切ったので欲しいところ。


 3日間ほぼすること無かったから詳細検索機能使いまくって色々分かった。


 音や匂い、頭上にも気をつけながら移動する。


 不便なことに、レベルアップするには一度楽園に入らねばならないということもこの3日間でわかったからな。


 今日はレベル10になってステータス結構上がった状態で、初のまともな探索になる。暗闇でもよく見えのはその影響もあるのだろう。感覚がより鋭くなったと感じる。


 詳細検索で確認したところ、ステータス表記されていない身体機能も上昇しており、数字だけが全てじゃないって感じの説明もあったしな。




 移動してすぐに実感する。


 何かがいる。


 肌がチリチリと粟立つ。


 …………鼻先を掠める匂い。


「!!!」


 その場から飛び退く。カンッと先程まで俺がいた場所の床に棒状の影が当たって、弾んだのを視界に捉えた。


矢か!?


「ゲギャ、ゲギャ!」


 商品棚の上で弓を構えているのは緑色の醜いアイツ! ゴブリンだ。


1匹?


「ゲギャ、ゲギャ、ゲギャ、ゲギャ!!」


 いや、暗がりや棚の隙間からワラワラ現れるゴブリン。


 その数は合計6匹。


 壁を背にした俺をゴブリン達が囲んでくる。


 何が嬉しいのか黄色い目と裂けた様な口元を歪ませて距離を縮めるてくる。


 奴らにとってのご馳走だからだろうか。それとも、嬲りいたぶれる対象を見つけたからなのか。


 …………不快だ。


 奴らの目には俺が獲物に見えているのだろう。


 先程から鼻につく濃い匂い。


 ゴブリン達の匂いとは別の人の血の匂い。


 奴らが現れた奥から洩れてきている。


 俺は床に落ちていたガラス製の車の芳香剤を拾うと、ただ思いっきり、棚の上の弓持ちゴブリンに向けて投げつけてやった。


 同時に一番端のゴブリンに向かって斧を振りかぶり距離をつめた。目を見開いて固まった表情のゴブリンの首を刎ねる。


 頭が無くなったゴブリンの胴体が倒れる音と、棚の上にいた弓持ちゴブリンが床に転落する音とが重なると、他のゴブリン達が一斉に騒ぎだす。


 先程までの嬲る獲物を見つけた表情などでは無い。


「なあ、お前らは俺を見て獲物だと思ったんだよなあ」


 俺が一歩前にでると後退るゴブリン達。


「つまり、人が『獲物だ』と思えるくらい、殺したってことだろう?」


 話している内容が通じているとは思わないし、自分でも何を言っているのかわかっちゃあいない。


 だが、強化された視力が、商品棚の奥で倒れている、背中からいくつもの矢を生やした小さな体が何なのかを俺に理解させる。


「いくらなんでも酷すぎるだろうが!!」


 一気にゴブリン達に突進する。


 右手の斧で牽制し、左手で革のケースから鉈を取り出して、一匹の眉間に叩きつけてやった。


 残り4匹。


 そのまま、両手で斧を握り直して野球のバッティングの様に振り切り、別のゴブリンが構えた武器を粉砕しながらゴブリンの顔面を破壊する。


 残り3匹。


 棚から落ちた弓持ちゴブリンが起き上がろうとしている姿が視界に入る。


 やらせるかよ!


 俺は大きく跳躍し弓持ちゴブリンの背を踏み付けてうなじあたりにナイフを突き立てる。グギャと一声上げて動かなくなるゴブリン。


 残り2匹。


 斧とナイフを構えて、ゴブリンを睨みつける。


「グ、グギャーー」


 武器を投げ捨て、背を向けて逃げ出しやった。


 不利と見るや見事な逃走に一瞬戸惑ってしまい、その隙に商品棚の奥の暗闇に紛れてしまいやがった。


 どうしよう。追いかけるか?


 だが、嫌な予感がするんだよ。


 ゴブリンたちが逃げ込んだ暗闇の奥の方から肌を刺すピリピリとした感覚が全身を包む。


 何かがいる!


「…ッ!」


 グシャっと嫌な音を立てて、俺の足元に転がってきたのは首をあらぬ方向に向けたゴブリン。


 先程逃げ出した一匹だろうか?




 ゆっくりと………暗闇が形を成す。


 黄色い瞳が暗闇の中でぎらぎらと揺らめいている。


 現れたのは巨大なゴブリンであった。


 確実に俺よりデカイ。


 なんだ、コイツは。


 顔の特徴はゴブリンそのものだが、首も胴体も腕も足も比べようが無いくらいに筋肉で覆われている。


 差し詰め、ハイゴブリンとでも言ったところだろうか。


 ヤバそうな雰囲気しかねえ!


 先程逃げた片割れらしいゴブリンが、ハイゴブリンに頭を鷲掴みされ足をバタつかせている。



「ゲギャアア!」


 ゴブリンと比べて低くて、耳障りな叫び声を上げると、鷲掴みしていたゴブリンを軽々と持ち上げ、振りかぶった。


「うおおお」


 すごい速さでゴブリンが飛んでくる。


 慌てて横っ飛びに回避した。


 な、なんて怪力だよ。


 投げられたらゴブリン、壁に張り付いているぞ。


「ゲギャア!!!」


 再び振りかぶるハイゴブリン。


 たが、ぞんざいに握り振りかぶったものを見た瞬間、俺は固まってしまう。


「ぐっ!!」


 斧を投げ捨て身体で受け止めて、床を転がる。


 人生で初めて感じたかも知れない程の激しい衝撃を受けて身体が軋む。


 だがーー


 俺は痛む体を無視して立ち上がる。


「ゲギャ、ゲギャ、ゲギャア!」


 目を細めて大きく口を笑みに歪ませ、棍棒を振り上げ突進してくるハイゴブリン。


「この腐れ外道が!」


 投げつけられた子供の亡骸を抱えて俺はあらん限りの声で吠えた。


に、日間ローファンタジー部門のランキングが凄いことになっていました!!


私が読ませて頂いていた他筆者様の作品の間にポンと私の作品の名前があるのが不思議でなりませぬ。


今後とも御贔屓にお願い致します。

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