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10.非常食があってもお腹がすいたら普通に食べてしまいう未来しか見えない!

メインヒロインきた!!!

「……おはよう」


 トイレへの挨拶を済ませて、身体を起こそうとして失敗する。


 痛い。


 足が痛い。立てないぞ。


 頭がぼんやりして上手く働かないなあ。


 何が起きたんだっけ?


 そもそもなんで足が痛いんだ?


 え~と。


 探索に出かけて、ゴブリンとかやっつけて物資を無事ゲットしたんだよな。


 んで、そうだ! 帰りに蜘蛛みたいな蚊のモンスターに襲われて――――


「あっ!」


 やっと頭がはっきりし、何があったか思い出した。


 右の太ももを怪我して、更に気持ちの悪い液体をかけらせて、身体が、麻痺して気を失ったんだ。


 よ、よく生きているな。


 ホントもうダメかと思ったんだけど。


「ふう」


 生きているってことは血は止まったのか?


 傷口はどうなっているんだろう。



 頭の中で、血で汚れ、かさぶたと化膿してグジュグジュになったキズ口を想像してしまう。見るのが怖い!


 いやいや、ちゃんと手当しないとそれこそ手遅れになるかもしれない。


 南無三!!


「え? あれ?」


 右ね太もものジーンズは綺麗に切り取られ、白い清潔そうな包帯がしっかりと巻かれているじゃないか。


 なんで?


 俺が無意識に処置したとか?


 ないない。


 医療系のドキュメントとか好きだけど、こんなきちんと包帯巻けない。


 じゃあ誰が?


 回りを見渡すと、もう見慣れたトイレの風景。


 …………リュクサックがないよ。


 そういえば、調達してきた物品がまるっと見当たらないぞ。


 ……うそ、え、マジで。


 気を失っていたときに誰かやってきたのか?


 見知らぬだれかが包帯巻いてくれた?


 その手当てしてくれた人が、リュク持ってちゃったんだろうか。


 せめて食べ物だけでも置いていって欲しかった。


 落ちこむ。


 というか死活問題だよ。


 足痛くて動けないし、誰だかわからないけど戻ってきてくれないかな。




 まあ、悩んでいてもしょうがない。


 とりあえず楽園に移動しよう。治癒力が増える効果あったよね。






 ありました。


 楽園に調達したリュクサック2個ともありましたよ。


 勝手に疑ってごめんよ。見知らぬ誰か。


 そういえば、気を失う前に、楽園に移動した気がしないでもない。てへぺろだな。


 だがそれでも、いやそれ以上に疑問が残る。果たして誰が手当てをしてくれたのだろうか?




 床にはリュクサックの中身が出されて、綺麗に並べられていた。


 部屋の隅には、手当てに使用したと思われる、開封された応急処置キットがまとめられている。透明なビニール袋に入れられている、赤く染まったガーゼやらが白い部屋の中で目立っている。


 おそらくこの楽園の中で、誰かがリュクサックから応急処置キットを取り出して手当てしてくれたのだろう。しかも他の物資も整理整頓のおまけつきだ。


 けれど、今俺から見える範囲には誰もいない。


 俺。そして空になったリュクサックが2個。リュクサックの中身である様々な物資。タブレットPC。床、壁、天井。


 これが楽園にある全て。


 一体、この密室で何が起きたんだ!


 この謎はこの俺が解き明かしてやるぜ。


 頭脳は32才、身体は細マッチョ。じっちゃんの名に――――――――。


 …………クウ。


 鳴いた。


 俺のお腹がだ。


 だいぶメシ食ってないもんな。そりゃ空気読まずに腹もなるわな。腹が減ってはナントやらだし、何か腹に詰め込んでおくか。


 俺は座ったまま非常食に手を伸ばす。届かない。もうちょっとで届きそうだけど……


「痛て!」


 身体を動かそうとするが、足に痛みが走る。


 …………カタ。


 ん?


 カタ、カタ。


 え!


 カタカタカタ。



 俺しか居ない空間に奇妙な音が響く。音の主は床に落ちてるタブレットPCだ。


 な、なんだ!?


 マナーモードか?


 カタカタカタカタカタカタ…………にょきにゅき!


 かたかたと震えていたタブレットPCの少し厚みのある横側から、にょきにょきとコンパスのような脚が生えてきた!!


 数は六本。


 唖然と固まる俺を余所に、タブレットの体をコンパスのような脚で持ち上げた謎物体は、器用にコンパス型の脚を使い物資の側に移動する。


 ま、まるで蜘蛛みたいだな。


 蜘蛛タブレット、モンスターとかじゃないよな。何する気だ?


 蜘蛛タブレットはカタカタ物資から、ペットボトルと非常食をコンパスみたいな脚でヒョイと背に乗せる。


 トコトコとペットボトルと非常食を落とすことなく、俺に近づいてきた。


「………………………………」


「………………………………」


 見つめ合う俺と蜘蛛タブレット。目があるのか不明だが。


「……………………………………………………」


「……………………………………………………」



 コンパス脚で背の非常食をツンツン突いて更に近づいてくる。


「…………持ってきてくれたのか?」


 まるで、そうだと言わんばかりにカタカタと脚を動かす。


 恐る恐る、蜘蛛タブレットの背中というか液晶画面から非常食とペットボトルを手に取る。


「あ、ありがとう?」


 とりあえずお礼を言う。円滑なコミュニケーションと人間関係には大事だよね。


 ぴょんぴょんと嬉しそいに跳ねる蜘蛛タブレット。


 ちょっとかわいいと思ってしまう。


 俺は受け取ったペットボトルを一口含み、非常食を開け齧る。


「甘い…」


 非常食はようかんだった。


 なぜかほろりと涙が出た。


「俺、生きているんだなあ。」


 横では心配そうに蜘蛛タブレットがコンパス脚をおれの膝に乗せて見上げている――――――


 気がした。







なんと日間ローファンタジー部門で51位になっていました!

ビックリして、うひゃ~ってなりました!!

モチベ急上昇ですよ!!!

ホントご来場の皆さま有難う御座いますです。


今後もぜひ今作品をよろしくお願い致します。

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