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稲村的突発性短編集

記憶者Bからの【お題】「小説家」「チート」「何でやねん」「超能力」これら4つのワードが必ず1回ずつは出てくる短編作品をお書きください_に対する回答作品。

記憶者Bからの【お題】「小説家」「チート」「何でやねん」「超能力」これら4つのワードが必ず1回ずつは出てくる短編作品をお書きください_に対する回答作品。


少々乱暴に書き殴ってしまいましたが、まぁ仕方ない。




 鉄衆てつしゅうは、自らが呑んだ酒に得体の知れぬ何かが入れられていた疑いは有ったものの、酔いと勢いに任せて飲み込んでしまった。


同僚の乱破者の谷地(やじ)がその昔、妙な尼僧から奪い取ったと言う丸薬を自慢気に見せながら、酔っ払いの据わった眼のまま、


「俺ら乱破者が死に損なったとて、何もありゃしないさ。だから、俺はこの丸薬をお前と半分づつ分けて飲む。それでお互いに何か有ったら報せ合えばよかろう?」


等と言い、小刀でさっくと割り、ざばばとどんぶりに注いだ酒に落とし、俺の前に突き出したのだ。挑まれた飲み競べかと勘違いして口を付けた瞬間、ころりと喉まで吸い込まれたそれは、あっという間に口の中から消えてしまった。



……そんなやり取りから暫くして、谷地は変わった。乱破者として動いていた筈にも関わらず、国から離れて勝手にやり始め、あれよあれよと言う間に裏から表、表から裏へと動き回り……遂には国主を奸計で亡き者とし、策謀の向こう側で暗躍するようになったのだ。


俺は……国主の忘れ形見の輝姫を護る事も出来ず、ただ裏切り者の谷地を斬って敵討ちすることしか出来なかった。



……そして、俺は追い腹を斬る事で、隠れた者への手向けとするつもりだったのだが……


俺が自らの腹に短刀を突き刺し、下へ斬り下げ横へと動かし、そして上へと斬り上げる。


素早く晒しを取り出し腹へと巻き、飛び出そうとするはらわたを押し戻し、手拭いを噛み締めて介錯役に目配せをする。


……これで、国主様、そして輝姫の元へと……行く事が出来る筈だ……





  「……あ、それチートだかんね?」


……ちいと?……少しって?何の事だ?



切腹して果てた筈なのに、俺は気付けば妙な空間に居た。


  「……金剛丹なんて使ったら、あんた死ねる訳ありゃせんかんね?」


俺の前には白い絹のような衣を巻き付けた、金髪の乙女が座っていた。俺は慌てて自らの腹を捲って確かめたが、切腹の跡は見当たらなかった。


  「それにしても、こんな無茶して世渡りするなんて無謀過ぎにも程があるかんね?笹舟で海に出て鯨を捕る位に無茶なんだかんよ?」


その乙女は胡座を掻いたまま、よっこいしょと言いながら座り直し、俺に向かって話し始めた。


  「……まぁ、それはともかく、ここは【小説家】ってのが創った世界。所謂いわゆる異世界への入り口ってとこなんよ」


無言で聞いていたが、俺は胡散臭さに堪り兼ねて立ち上がると、踵を返して帰ろうとした。


  「なんでやねん!!こっちがまだ話してるんに、勝手に帰ろとすんなし!」


乙女はそう言葉を粗げながら立ち上がり、手をパンと叩いて掌を捻る。すると俺の身体は勝手に廻るとストンと座らされ、動けなくなる。


  「ほれ、これがこっちの超能力ってもんだね?諦めて話だけでも聞いてくんなし?」


意味の判らない言葉の羅列に辟易としながらも、ちょうのうりょく、とか言う単語だけでも判らぬものかと思案し、結論を考える。それはつまり……いや、全く判らぬ。


  「まーまー、取り敢えず大人しく聞いてくんなし?悪いようにせんかって」


見た目と全く合わぬ物言いに、俺は胡散臭さしか感じなかったのだが、次に言われた言葉はその思いを更に強めたのだった。


  「あんた、死なぬ身で腹詰めてどーする気だったか知らんけど、そのせーで転生することになったんよ?……で、どれにするん?」


見れば手の中にいつの間にか幾枚もの小札を持ち、ひらひらとさせながら突き出してきた。それには【無双】だの【酒池肉林】だの【超能力】だのと記されて居て、実に胡散臭い。何れも此れも若造が飛び付きそうな語句なのだろうが、俺には全く合わぬ代物にしか見えぬ。


  「はっはーん、あんた、これ……嫌いなんか?そーなんね……たまーにそんな輩が居るって聞いてたけど、あんたがそれなんね……」


ややシュンとした乙女は、力の抜けた様子で項垂れてしまう。俺は流石に悪い気がしてきて、仕方なく付き合うことにしたのだが……、何かを察した乙女は嬉しげに顔を上げて、


  「そーかそーか!!やる気になったんか!!よかったよかった!!」


乙女はまるで尻尾を振る犬のように嬉々としながら立ち上がり、俺に手を差し出して頭を撫でる。



……すると、俺の身体はみるみる小さくなり、小さな卵のように丸まり身動きが取れなくなる。



  「ほーれ、力は与えたし、技の極みは歳降りに併せて高まるようにしといたぞ?……でもな?……何事にも《対価》は有るものぞ?」


そう言いながらにやりと笑い、乙女は最後にこう付け加えた。




  「……それで、あんたの【苦手なもの】って、何なんぞ?」





練り込みが足りない点は御容赦。


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稲村某の他の現行が気になったら……《でぃふぇんだ~!!》~乙女の嗜みは盾防御から?~
― 新着の感想 ―
[一言] 読みやすいですなぁ。最初の方が「どういう時代?」と少し混乱したので、その辺りだけ改変すればいいかもですね(o'∀')b 文庫本というか文学というか、その辺りの謎の安心感を覚えつつ今の転生が出…
2018/09/28 23:01 退会済み
管理
[良い点] 数秒で時代物とハッキリ分かるなんて凄いでゴザル 拙者など、それらしい単語用意して 語尾にゴザルをつけて誤魔化すのが限界でゴザル 面白かったでゴザル  [一言] 大喜利企画が運営に潰されて…
[良い点] 読みなれぬ時代物の雰囲気に、お題の存在そのものを楽しんでいたところで、いきなり【チート】が出てきて、回答作品であったことを思い出す始末!笑 スキルが「小札」で表現されているのは完全なる初…
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