タカヒトの場合-2
刻々と近付くサナエの結婚。
俺はどうする事も出来無い。
サナエの要求に応えたい。
だけどそれは最終的にサナエを悲しめてしまう。
俺ができる事は、サナエに諦めてもらう事だけ…。
それは俺が応えないということ。
そう。
それだけ。ただそれだけなのに…
簡単に出来ればいいのに…
頭では理解してるのに…気持ちが抑えられ無い。
毎日ただただ、がむしゃらに仕事をした。
サナエの事を考える暇がないほど。
そんな時だった。
「大陸ー。呑みにいかねーか??」
「なんすっか?!木戸さんのおごりですか~??」
「ま。考えてやるよ。でどうすんだよ??」
木戸さんからの誘い。
いつもボンヤリ何考えてるかわからない木戸さん。
滅多に呑まないのに。
もちろんそんなレアな誘い断るはずがない。
「はいよ。おまち~。」
頼んでおいた焼き鳥は
おれのジョッキが空になった時を見計らってきた。
「あ。おかわり。」
「はいよ。」
俺と木戸さんは会社の愚痴。
これからの事。
今木戸さんがハマっていること。普段では考えられ無いほど引き出しが豊富で驚いた。
何杯呑んだだろう?
ビールから焼酎にシフトしていた。俺は久しぶりに酔って、もうテンションがおかしくなっていた。
木戸さんは全然変わら無い。
変に絡んでた俺を上手にかわす。
「大陸さぁ、お前無理すんなよ。」
「へ??」
「高島の結婚お前相当ショックうけてんだろ?」
意図し無い言葉にふいてしまった。
「何言ってるんすか?!全然ショックうけてませんよ!」
「お前ら付き合ってたの知ってんぞ。」
驚いたってもんじゃなかった。
仕事場でそんな素振りしたことなかったのに。
どうやっても気づかれ無いはずだったのに。
「木戸さんそれ妄想っしょ?!」
「なんかさ、一時は凄いお前らいい顔して仕事してたのにさ、何年か前から壁ができただろ?」
何も言えなかった。
木戸さんに嘘はつけ無いないって諦めた。
「はは…。木戸さんには嘘つけ無いっすね。」
「当たり前だろ?なめんな。」
今まであった事を木戸さんに話した。
サナエの浮気の事も。この間の話も。
木戸さんは少し呆れ気味に笑って、高島っぽいな。って言った。
気づいたら涙が出ていた。
「ちょっ!おま。」
さすがの木戸さんも驚いた様子だ。
「はは。木戸さんのその顔スゲーレアですね。」
「ばかかお前?」
俺はこのやりとりが凄く可笑しく感じられて、大笑いした。なんだか色んな物が笑い声と同時に出ていった感じがする。
今まで俺は俺を縛りすぎてたのかもしれない。もう少し自分を大切にしてもいいんじゃないか。それに俺を必要としてくれる人がいる。俺は一人じゃない。
木戸さんと別れて、少し歩いてポケットの携帯を取り出した。
「もしもしケイコ?今から家いっていい?」
サナエとタカヒトの出会いと別れを書きました。
ここまでは書きためていたお話。
次からは新しく考える話になりそうです。