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candy box  作者: にゃこ
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タカヒトの場合-1

grape candyの前後話

サナエと俺が話したのは、初めて二人きりで残業をした時。


サナエが自分のお気に入りのぶどう味の飴を片手に俺に資料を渡しに来たときだ。


前々から気になっていた存在。

その日を境に俺たちは会社帰りに、こっそり遊ぶようになって、最終的に付き合うことになった。


お互いがお互いを刺激しあってお互いに足りない部分を補って


愛し

愛されていた。


最高に幸せな日々は永遠かのように思えた。


それなのに。


時期が悪かったとしか思え無い


付き合って一年とちょっとがたったころ、仕事が連日残業続き。休日はサッカー。サナエに構っている時間が無くなっていた。


俺は信じていた。


いや


甘えていたのかもしれない。


どれだけ構えなくてもサナエは他の女と違う。


それに


サナエは俺の事が大好きで

サナエは俺に依存していると


あの日までは。


ただ自惚れていただけだった。

あの頃の自分を殺したくなる。



忘れもしない。

あの日、サッカーの練習をするために車を走らせていた。突然の集中豪雨で練習は中止。渋々家へ帰る途中、長い信号にぶつかった。


ボンヤリ信号を渡る人達を眺めていた。


普通。


普通。


こんなに世の中は広いのに、可愛い子は本当にいないんだなぁ。と思った。


お。可愛い。


あれ?


俺の目に映ったのは紛れもなく可愛い子だった。

当たり前だ。

俺の彼女なんだから。


俺の彼女なんだ。


俺の。


サナエの横にいるのは知らない男だった。

俺よりも身長が低い。

俺よりも目がデカい。


俺と全然違うタイプだった。


楽しそうに笑うサナエ。

知らない男はサナエの頭をくしゃくしゃっと撫でていた。


クラクションの音が響く。

信号はいつの間にか青に変わり、スローな世界は一瞬にして現実へと戻っていた。


信じれないまま家へ急いだ。


サナエに電話をしなければ。

電話をしてサナエに本当の事を聞きたくて仕方がなかった。


プルルルル・プルルルル


電話のコール音が続く

俺はただ祈るしかできなかった。


プルルルル


「タカヒト?どうしたの??」


いつものサナエの声だ。

まだ街中にいるのか、周りが賑やかだ。


「練習がさぁ中止になって、会えそうなんだけど、いける?」


「あー・・・。ごめん今友達と遊んでるんだぁ。」


嘘だ。


「アキナと会うの久々だからさぁ・・・」


平然と嘘をついた。


「そっか。ごめんな。急で。じゃ」


電話を切った指は震えていた。

信じたく無い現実が起きた。

何も考えれなかった。携帯を横に置き、両手で頭を抱えた。


ものすごく腹が立つのに

ものすごく悲しいのに


涙がでてこない。


全ての力が体から抜けていく。

俺はそのままベッドへと横たわった。


別れを切り出したのは俺からだ。別れの理由を聞いたサナエは後悔している目で俺に訴えた。


「だってタカヒト全然あってくれないじゃない!!二ヶ月もだよ?!」


「それでもやっちゃ駄目な事ぐらいわかるだろ?!」


「・・・わかってるよ。だから内緒にしてたんだもん。ごめん・・・」


当時の俺はサナエを許す事が出来なかった。まだ子供だったんだと思う。一方的に別れた後何度もやり直したかったけど、心の整理と踏ん切りができなかったが、職場では何もなかったかのように接していたから、付き合う前の状態にまで今は落ち着けた。


そして一年が経って、サナエはあの時隣にいた知らない男と付き合った。それはもう二年前のことだ。そして今サナエは結婚前。


その話を聞いた途端

俺の微かな望みも絶たれた。


たった一年の付き合いだったのに。俺には彼女しかいなかった。何度も別の女と付き合っても満たされず、何度も別れた。


サナエの結婚の話をきっかけに

やけくそでケイコと付き合った。サナエとは全くタイプが違ったがどこか性格が似ていた。ケイコにサナエをかぶせている俺は最低だ。

それでもひとりでいるよりかましだった。


自己嫌悪に浸る毎日。

そんな時だ。

いつも通り淡々と仕事をしていたら、サナエからメッセージがとんできた。


「今忙しい?」

「別にそうでもないよ。」

「一緒にご飯いかない?久しぶりに。」


結婚前で辛い事があるのかと思って「いいよ」と返した。


久しぶりの2人きり。

弾んじゃいけないが、胸が弾んだ。


サナエが先に会社をでて

いつもの所で落ち合って

いつもの居酒屋へと向かった。


この後、どれだけ俺の気持ちが

揺らぎそうになるなんて思ってもいなかった。



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