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第97話



「『国王代理』は『さくらの魔石』の換金を忘れているようだな。しかしそのお陰で魔石の『性能』を知ることが出来た。よって『さくらの魔石』は価値が高いと判断し『価格』が正式に決定した。そして今回の『乙女の魔石』は質が悪く価値が低い。よって価格を下げてある。金額は神殿より報告がいくはずだ」


「『さくらの魔石』ですか?」


「『乙女の魔石』と比べても精度があまりにも違い過ぎる。そのため『乙女の魔石』とは別の魔石と判断した」


確かに男神の言う通り、『乙女の魔石』と『さくらの魔石』は大きさも精度も違い過ぎる。

『さくらの魔石』を初めて見たマクニカが不信感を持ち、雑に扱ったのも正直分かる。

(こぶし)大』の大きさをした『正二十面体』の魔石・・・というよりピンク(さくら)色をしているのに純度の高い水晶。


実際に『さくらの魔石』に魔力を通したセルヴァンとドリトスは、『あること』に気が付いていた。


『乙女の魔石』を含めた魔石全般は、魔力を込めると多少の差はあるが『抵抗』が起きる。

それは魔石自体が、大気に混じった『良くないもの』を固めたものだからだ。

しかし『さくらの魔石』は、同じ『良くないもの』を固めたにも関わらず『抵抗』が全くない。

逆に『使用者』に対して負荷が掛からないように『軽減作用』を感じられる。

つまり『魔石全般』に魔力を100%流すと、75〜80%の威力で『発動』する。

それが『さくらの魔石』の場合、魔力を同じ100%で流したら、1.5倍の威力を発動させるのだ。


・・・それ以上かもしれない。





「ああ。準備が済んだようだな。ではさくらのことはキミたちに任せたぞ」


男神がさくらの寝室に目をやったあと4人に顔を向けると、そう言い残して姿を消した。

同時に結界も解除される。




「・・・さくら!」


ヒナリが真っ先に寝室へ飛んで行った。

『飛んで行った』のは、慣れない正座で足が痺れて立てなかったからだ。

先程は開かなかった扉が内側から開いて、ヒナリはベッドの上へ直行する。

そこにはさくらが眠っていた。


「さくら・・・さくら・・・」


ヒナリはさくらの名前を繰り返しながら、さくらを抱きしめる。

さくらの頬を撫でてキスをするが、さくらは何も反応をみせない。


「ヒナリ・・・」


「大丈夫よ。間違いなく、さくらはここに・・・私の腕の中にいるんだから」


ヒナリはさくらの頬を撫でながら、愛しそうに微笑む。

ヨルクもヒナリの横に座り、ヒナリの腕の中で眠るさくらの頭を撫でる。


「・・・そうだな。こうやって顔を見て()れられる距離にさくらがいる」


いいんだ。いまは無理せずゆっくり休んで。

そして、ココロが癒されたら『帰っておいで』。




2人の姿を見守っていたセルヴァンは思う。

以前ドリトスが指摘した通り、さくらはこの子たちを成長させる『雛』なのだ、と。

2人・・・特にヒナリはさくらと関わってから、大きく『成長』した。

さくらと出会う前のヒナリは上手く自己主張が出来ず、ヨルクに振り回されてついて行くだけだった。

しかし今はまださくらに関してだけだが、自己主張をするようになった。


ヨルクは、ヒナリ以外の相手には特に興味を持っていなかった。

それが、さくらのために自ら考えて動くようになっている。

ただ、他種族やさくらのことをよく知らず、『さくらにとって良いかどうか』まで分かっていない。

だから『翼族の羽衣』を身につけさせたさくらは、ずっと日向(ひなた)に出ていても大丈夫だと勘違いをしていた事もある。

それ以降は、さくらのためになるかどうかを考えるようにはなったが・・・


『さくら優先』になってる気は(いな)めない。

それでも2人にとっては『大きな進歩』だった。





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