第92話
「さくら。大丈夫ですか?」
花の香りに包まれて、フワフワした夢を見てた気がする。
頭がボーッとしてて、今の状況が追いつかないんだけど。
とりあえず、こういう時に言う定番のセリフは・・・
「ここはどこ?私はだあれ?」
エッと驚くアリスティアラ。
その横にいた創造神が苦笑しながら「ここはマンションの部屋。キミは『さくら』」と返す。
その様子に『記憶喪失』を一瞬疑ったアリスティアラは安心する。
「ンもう!変なこと言うから心配したじゃないですか!」
「創造神。どっかに『モ〜モ〜鳴いてるウシさん』がいる〜」
「『メス牛』か?良かったじゃないか。牛乳飲み放題だぞ」
「『乳牛』の方なの?『肉牛』じゃなくて?」
「もう!2人とも!」
アリスティアラの言葉に創造神と声を上げて笑った。
「私が『コッチ』に戻って、どれくらい経ったの?」
「コッチに帰って来た日を『1日目』と数えるなら『10日目』」
「・・・けっこう長く寝てたんだ」
「精神的な負担がかかり過ぎたみたいだな」
「気分はどうですか?」
「頭がボケラッタ状態」
「それは『寝すぎ』だからだ」
「ザンネーン。『もとから』だ〜」
「それはオレでも『治せない』な」
私と創造神との掛け合いに苦笑するアリスティアラ。
私の額から頬にかけて何度も触れて「もう大丈夫ね」と安心している。
あー・・・『また』熱を出して、アリスティアラに心配かせていたのか。
「ゴメン」
私が謝るとアリスティアラは首を左右に振って頭を撫でてくれた。
創造神に目をやると「『あの日』のことを知りたいのか?」と指摘されて頷く。
「あの日『聖なる乙女』が2人来たのは知ってるな」
「私が瘴気の浄化を拒否ったから」
「いや。そうじゃない」
私の言葉に創造神は苦笑する。
だったらなんで今回は『聖なる乙女が2人』?
そう聞いたら、他国の私への対応を問題視した創造神が、『聖なる乙女が1人では、何か問題が起きればさくらに負担がかかってしまう』と思ったかららしい。
そして『見ず知らずの2人』ではなく『関係が良好な2人』が選ばれたそうだ。
今回の『聖なる乙女たち』は、『1+1=2』ではなく『だいたい0.5+たぶん0.5=なんとか1になるかな〜?ビミョーに足りないかも・・・。ま、いっかー』らしい。
そのため「今回の『乙女の魔石』の精度が悪く価値は低い」そうだ。
以前『この国の宰相』が言っていた『銀貨10枚』が相場らしい。
そういえば、前に「なんで『銀貨10枚』なんだ?『金貨1枚』と言えばいいのに」と言ったことがある。
そうしたら「『銀貨』の方が『金貨』より価値が下がりますから」と言われた。
日本円で『千円札10枚』と『一万円札1枚』なら『同じ紙じゃん』となるが、『金貨』と『銀貨』では、『材質が違う』から『1枚の価値』が大きく変わるらしい。
「つまり、『1円玉』と『10円玉』と『500円玉』みたいなものか」と言ったら「だいたいそんなカンジですね」と言われた。
ちなみに銀貨10枚では『金貨1枚分』の価値もないそうだ。




