第90話
「・・・ヒナリ。さくらが怯えたのはワシらが抑えていたはずの怒気を『感じ取った』からじゃ」
「どういう・・・こと、ですか?」
なぜ・・・さくらが怯えるほどの怒気をドリトス様が?
私にはドリトス様たちからは怒気を感じ取れなかった。
そんなに弱い怒気をさくらが?
「今日『聖なる乙女』が召喚された。それも2人同時にじゃ」
「幼馴染みで親友同士だと言っていた。彼女らは『同じ世界』から来たという理由から『友だち感覚』でさくらに会いたがった。・・・しかし、さくらはまだ本調子ではない。国王代理からも理由を話して直接断った」
「さくらとヒナリが寝てる時にな。来たんだよアイツら。『見舞い』だと吐かしやがった」
彼らの口調から、その場面を見ていないヒナリでも分かった。
3人は『聖なる乙女』たちから、さくらを守ってくれたんだ。
「ゴメンな。アイツらの身勝手な態度がガマン出来なかった・・・」
「俺たちも。ハンドくんが寝室に結界を張ってくれたと聞いて、さくらに負担がないと思って怒気を放ってしまった」
ヨルクとセルヴァンの謝罪に首を左右に振る。
「そんな自分勝手な人たちにさくらが会っていたら、きっと『無責任な言葉』でさくらが傷つけられていたと思います」
「ワシらもな。ヒナリと同じ意見なんじゃよ」
大体、断られた『見舞い』を強行する人たちだ。
・・・セルヴァン様たちがいて良かったと本当に思った。
さくらだけだったら、無理矢理にでも部屋に入り込んでいたかもしれない。
そしてハンドくんの存在を知ったら、居座っているだろう。
『元の世界』の食事を作ってくれて世話もしてくれる。
そんな『存在』を知れば『ほしくなる』だろう。
それこそ『力ずく』で奪おうとすら思うのではないか?
・・・彼らは『意思を持った個々の存在』だから、『返り討ち』にあうのは確実だろうが。
『ハンドくん』たちは『さくらのため』に存在している。
さくらのためにならないと判断すれば、徹底的に『排除』に走るだろう。
ハンドくんたちは、たとえ神が相手でも『さくらの敵』と見做したら、言い訳無用で『排除対象』にするだろう。
さくらには『神々』もついている。
・・・神々は『さくら』と『乙女』たちの、どちらを『大切』に思っているのだろうか?




