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第89話



さくらが『何か』に怯えている。


初めはヒナリがヨルクに向けた『怒り』に怯えていると思っていた。

しかし、さくらは俺たちが『聖なる乙女』に向けて放った怒気(どき)を感じ取ってしまったようだ。


ドリトスがヒナリたちの諍いを止めに行った。

ヒナリの『普段と変わらない』怒りにすら、酷く怯えているからだ。


2人も、さくらの『何時(いつ)もとは違う様子』に気付いたのか、慌てて駆け寄ってきた。


さくらの身体が震えだし、脂汗も止まらない。

閉じた両目からは絶えず涙が流れ続けている。

自身を掻き(いだ)くが、震えが止められないようで背を丸める。

俺が強く抱きしめても背中を(さす)っても、さくらの震えは止まらなかった。



そんな時だった。

さくらが召喚された日に現れた鉄扉が、部屋の大半に敷かれた『畳の外側』に現れた。

扉が開くと同時に風が吹き込み、俺たちの身体は身動き出来なくなった。

声も出せない。


風が抱きしめていたさくらの周りに集まり、そのままさくらの身体を持ち上げて鉄扉の中へと運んでいく。

俺は『神の意志』に逆らわず、抱きしめていたさくらをから手を離した。

『今のさくら』を守るためには、『扉の向こう』に連れていくしか方法がないのだろう。


「ふ・・・ざけんな!・・・さくらを・・・返せー!」


ヨルクが身体を無理矢理動かそうとするが、バランスを崩してそのまま畳に倒れ込む。

それでも必死にさくらに向けて手を伸ばす。


「さ・・・く、ら・・・さくらー!」




風の中にいるさくらは目を閉じたまま。

ヨルクの声も届いていないのか。

ピクリとも反応しなかった。




さくらを飲み込んだ鉄扉が消えると、俺たちの身体は先程までとは違い問題なく動けるようになった。



「ちくしょー!」



ヨルクが悔しそうに畳を叩き続ける。

ヒナリはさくらの名を繰り返し呼びながら泣いている。



・・・違和感から周囲を見回すと、ドリトスと目が合った。


「気付いたかね?」


「・・・ハンドくんたちがいなくなりましたね」


「彼らは『さくらの世話係』じゃ。・・・さくらの世話をしに行ったのじゃろう」



「さくらは、なぜ、いなくなったの・・・?」


ヒナリが「私がヨルクを怒ってたから?」と自分を責め出す。

確かにヒナリの怒りに小さくなっていたが、それは『ヨルクと一緒に叱られないよう』に身を縮めて『隠れているつもり』なのだと誰もが思っていた。


だから、ヒナリはあとで『膝だっこの刑』にするつもりだったのだ。





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