第83話
「で?『さくら』は?」
ヨルクはリビングでセルヴァンとドリトスに問いかける。
「なにがだ?」
「さくらがセルヴァンたちがいないって不安がって・・・急に意識を無くしたんだよ。目を覚ましたら『セルヴァンが先にご飯を食べてなさいって言った』って言い出すし・・・」
ドリトスとセルヴァンは顔を見合わせて苦笑する。
「なんだよ」
「確かに『さくら』は俺たちを探し回っていたぞ」
「『聖なる乙女』が来たから部屋に帰らないのではないか、とな」
「・・・そんなこと、あるはずないのに」
それはさくらにも分かっていた。
だが、勝手な『思い込み』ってこともある。
彼らはイレギュラーな自分を『必要とは思っていない』のかも知れない。
『ジャマと思っている』のかも知れない。
あの時いた5人のうち3人は『絶賛天罰続行中』だ。
・・・残ってる2人が『仕方がない』から。
『天罰に巻き込まれたくない』から。
だからそばにいるだけかも知れない。
『見張り』のためにいるだけかも知れない。
さくらはちゃんと『2人の口から』直接聞きたかった。
「そんなことはない」と。
・・・それでも『肯定されたら』と思うと、怖くて聞けなかった。
「ん・・・?」
ちょっと待て!
いま、セルヴァンはなんて言った?
「『探し回ってた』?今のさくらは『1人で身体を支えられない』くらい弱っているのに?」
そんな彼女が『歩いて探す』なんて無理な話だ。
いや。意識を無くした身体は、オレが目を覚ますまでずっと抱きしめていた。
「・・・ああ。ワシらが見た時は泣きながら『歩いておった』。だから『実体』ではないことに気付いたんじゃ」
「『魔石の光』に包まれていたから、他の者には姿が見えていなかったようだ」
「ちょうどワシらに神々の姿が見えぬようにな」
そんな時、リビングにいたハンドくんたちが、一斉に応接室側の扉を指差した。
表情が出ないため感情を推し量るのは難しいが、ハンドくんたちが『怒っている』のは理解出来た。
「誰か来たのか?」
ハンドくんたちの様子では、ジタンではないだろう。
この王城で働く者達は、この最上階には必要がなければ来ない。
・・・それでは『誰』か。
そんなの『聖なる乙女』しかいないだろう。
「仕方がない」と腰を上げるセルヴァンとドリトス。
「オレも行く」とヨルクもついて応接室に向かった。