第82話
「それで?」とドリトスが2人に聞くと、今度は顔を曇らせる。
「最初の頃は『一緒』に寝てたんじゃなかったかね?」
「今は特に『病み上がり』だからな。1人で寝ているのは寂しいから嫌がっているんだぞ」
セルヴァンの腕の中で眠るさくらに全員の目が向く。
「・・・ゴメンね。さくら」
ヒナリがさくらの頭を撫でて謝罪する。
「セルヴァン様。さくらをベッドに寝かせて頂けますか?私が一緒にいますから」
ヒナリが頼むとセルヴァンは頷いて、さくらをベッドへと運ぶ。
ベッドに寝かせたさくらが温もりを失ってグズり出したが、「大丈夫よ。さくら」と横に寝転んだヒナリが抱きしめると安心した様子で再び眠り出した。
「ゴメンね。さくら。『1人』は心細いよね」
さくらの背を撫でながらヒナリは謝る。
自分も昔はそうだった。
『族長の娘』として、過度な期待を持たれて。
無言で『期待以上』をいつも要求されて。
でも、自分にはいつもヨルクがそばにいた。
ヨルクは一度も『期待』を押しつけてこなかった。
『そのままの自分』を見てくれていた。
そうだ。さくらが寝る時は自分たちも一緒だったけど、ドリトス様やセルヴァン様は寝付くまで必ずそばにいる。
1人で寝かせることは絶対にしていない。
だって・・・さくらはこの世界で『ひとりぼっち』なのだから。
「ママぁ・・・」
「ここにいるわ」
さくらの寝言に返事をしたヒナリは、優しく少し強めに抱きしめて頭を撫でる。
さくらは甘えるようにヒナリの胸に顔をすり寄せる。
「マぁマ〜」
「なあに」
「だあいすきぃ〜」
語尾にすうっと寝息が続いて寝言だってすぐに分かった。
それでも・・・分かっているのに涙が出るほど嬉しかった。
「私も。さくらのこと大好きよ」




