第77話
「・・・セルぅ・・・ドリぃ・・・どーこー?」
いつも真っ先に誉めてくれるドリトスとセルヴァンの2人がいないことに気付いて不安になったのか、さくらが心細そうな表情でキョロキョロと辺りを見回す。
「大丈夫よ。お2人ならジタンの所よ。すぐに戻られるわ」
「・・・もどってこない、よ」
「さくら?」
ヒナリが心配して手を伸ばすのと、さくらが意識を無くしてヨルクに倒れ込むのが同時だった。
ちょうどその頃。
さくらが何度も招かれた応接室のソファーに『聖なる乙女』が座っていた。
それも2人。
さすがに世界の瘴気が濃くなり過ぎたため、1人では対応しきれないと判断されたのだろうか。
それ以外に理由があるのだとしても、神々が説明してくれるとは思えない。
それでも神々には『さくらに瘴気の浄化をさせる』気が毛頭ない事だけは分かった・・・
話から2人は幼馴染みで親友同士という関係らしい。
『聖なる乙女』や『乙女の魔石』の簡単な説明を終えた所で、部屋の外から「セルぅ。ドリぃ。どこぉ・・・」という小さな声が聞こえてきた。
「え!さくら様?」とジタンが慌てて立ち上がる。
セルヴァンとドリトスは、声が聞こえると同時に慌てて廊下に飛び出していた。
「さくら!」
「どうしたんじゃ。何があった・・・」
廊下にいたのは『白い影』。
しかし2人には泣きながら『歩いて』近付いてくる『さくら』の姿が見えていた。
すぐに『実体』ではないことに気付いたが、セルヴァンは目線を合わせるため片膝をつく。
「どうした?さくら」
「何を泣いておる?」
ドリトスがさくらの頭を撫でる。
驚いたことに、さくらに触る事が出来た。
「『聖なる乙女』が来たんでしょ?・・・もう『戻ってこない』の?」
「おやおや。ヨルクかヒナリがそう言ったのかね?」
ドリトスの言葉に、さくらは首を横に振る。
「ヒナリは『すぐ戻る』って。でも・・・だって・・・」
涙が溢れ出して言葉が続かなくなった。
セルヴァンが安心させるように、さくらを抱きしめる。
「大丈夫だ。もう少しで『仕事』が終わる。そうしたら、さくらの部屋に戻るからな」
「・・・ホント?」
「ああ。だからヨルクたちと先にご飯を食べてなさい」
さくらはドリトスに顔を向ける。
「ドリぃは?」
「ちゃんとセルヴァンと一緒に『帰る』からな。それまでは部屋から一歩も出るんじゃないぞ」
「・・・うん」
ドリトスが頭を撫でて言い含める。
安心したのか、納得出来たのか。
さくらの姿がすうっと消えた。
「心細くさせてしまったな・・・」
「ワシらもヨルクの事を言えぬな」
「ええ。まったくです」




