第74話
「なあ。『おくすり』ってなんだ?」
ヨルクの言葉に、ドリトスとセルヴァンが眉間に皺を寄せる。
「病気になった時に飲むんでしょ?」
それがどうしたの?
不思議そうに聞いてくるヒナリに、「朝、さくらがプリンを食ってただろ?」と聞けば頷く。
「あの前にな。さくらが『小さいもの』を無理矢理飲まされていたんだよ。ハンドくんたちにな」
セルヴァンが慌ててさくらの額に手をあてる。
発熱は感じられなかった。
さくらはいまセルヴァンの『ひざまくら』で眠っている。
掘りごたつに落ちないように、セルヴァンは身体を座卓から出して胡座になり、その足を枕にしたさくらは座卓を頭にTの形になっていた。
身体にはハンドくんにタオルケットを掛けられている。
そのハンドくんが、リビングに置かれているホワイトボードに『あれは『解熱剤』』『熱が出た時に飲む薬』と書いた。
それに慌てた4人。
「さくらは熱が出てたの?」
「少し身体が熱いと思ったけど寝起きだからかと・・・」
『大丈夫』
『今朝は予防のために飲ませただけ』
ハンドくんの『言葉』に安心する4人。
しかし・・・ヨルクは説明に含まれていた単語に気付いた。
「『予防』ということは『熱が出る可能性はあった』ということか?」
そう聞くと『『懐かしい夢』を見た時は特に』と返ってきた。
『懐かしい夢』・・・それは『元の世界』の頃だろう。
「今朝・・・さくらは泣きながら目を覚ましたんだ」
「だから樹の上にいたのね」
ヒナリの言葉にヨルクは無言で頷く。
「さくらが『こなこな』さんと言ってたが、あれはなんだ?」
『今朝飲ませたのは『錠剤』』
『他に『液体』と『顆粒』がある』
『『こなこな』は顆粒のこと』
「『苦い』と言っていた」
『顆粒は他の薬と違って苦いのが多い』
『さくらは上手に飲めず、一部が口やノドに残ってしまう』
『顆粒はすぐに溶けてしまうため『苦味』を感じてしまう』
それを聞いた全員が思った。
『・・・それは自分でもイヤだな』と。