第73話
「2人で何してるの?」
ヒナリがオレたちの前にとんで来た。
「おはよう。ヒナリ」
「おはよう。さくら〜」
さくらを笑顔で抱きしめるヒナリ。
そのままオレにはキッと睨みつける。
・・・あれ?
やきもちを妬く『相手』が違わないか?
「さくら」
オレに呼ばれると、すぐに顔を向けて口を開くさくら。
その口にプリンを入れると、また満面の笑みを見せる。
「えー!何それ!カワイイ!!」
私もやるっとヒナリがスプーンをもぎ取って、ハンドくんの持つプリンを掬ってさくらに与える。
笑顔を見せるさくらにつられて笑顔になるヒナリ。
さくらのカワイイ笑顔が見たくて、ヒナリはプリンをあげ続ける。
もちろんプリンはいつまでもある訳ではない。
もともとヒナリがくる前に、プリンは3分の1以下まで減っていたし。
「もうおしまい」
2人にそう告げると、揃って口を尖らせて膨れっ面になる。
「さくら。ほら」
「わぁー。『日の出』だ。キレイ!」
少しずつのぼる陽。
空もだんだん明るくなっていく。
口の周りをハンドくんに拭かれてキレイにされているが、目は陽を見ている。
ヒナリもさくらの反対隣に座っている。
ただし見てるのはさくらだ。
目線をチラリとオレに向ける。
オレが自分の口の前に人差し指を当てると、ヒナリは黙って頷いた。
しばらく見ていると陽が完全に地平に姿を現した。
「さあ。お散歩は終わりだ」
さくらを抱き上げて地上に降り立つ。
ドリトスと『人型』に戻ったセルヴァンが笑顔で出迎える。
「『おひさま』キレイだったよ」
「よかったな」
「うん!」
セルヴァンの腕の中で目を輝かせて話すさくら。
ヘタをすればさくらの生命を奪いかねない『陽の光』。
それを『キレイ』と喜ぶ姿に、みんなは笑顔になる。
「ねぇねぇ。また『獣化』してね。そしてまたみんなで一緒に寝ようね!」
さくらの『お願い』に反対する者は、誰もいなかった。




