第72話
「ちょっと『朝の散歩』しようぜ」
さくらを抱き上げて、部屋の高さ7割まで育った大きな木の太い枝まで飛ぶ。
地平に近い空が白くなり始めていた。
「わぁー!あそこではもう『朝』なんだね〜!」と、目を輝かせて喜ぶさくらの身体を支えながらヨルクは枝に座る。
突然目の前にポンッと音を立てて現れたハンドくんたちが、水の入ったコップと何か小さいものを持って現れた。
「お水は飲むけど『おくすり』いらない」
大人しくコクンコクンと水を飲みだしたさくらに、ハンドくんたちが強引に小さいものを口に入れてコップの水をすべて飲ませる。
ハンドくんたちがさくらにチカラずくで『実行』するのを初めて見たヨルクは驚くが、彼らは『さくらのため』にならないことは決してしないだろう。
「えーん。ハンドくんたちがイジメるー」
ハンドくんたちに押さえつけられていたさくらがヨルクに泣きつくが、「ハンドくんたちは『さくらのこと』を思ってやってるんだろ?」と頭を撫でながら言うとプクーッと頬を膨らませる。
「『おくすり』キライだもん。『こなこな』さんは苦いし・・・」
さくらの言っていることは分からないが、『おくすり』とは先程の『小さいもの』のことだろう。
目の前にお皿を持ったハンドくんたちが現れて「プリン〜♪」と喜んださくらだったが、必死に伸ばすさくらの手は届かない。
さっきの『さくらの泣き言』が聞こえていたのだろう。
「さくらにプリンを食べさせてやってくれないかな?ちゃんと『おくすり』は飲んだのだから」
手を伸ばすさくらが落ちないように支えながら、ハンドくんたちにお願いする。
ハンドくんがスプーンでプリンをひと口分掬い、「あーん」と大きく開いたさくらの口に入れる。
パクンと口を閉じたさくらは「おくちなおし〜」と笑顔になる。
プリンが近付けられると口を開けるさくらが可愛くて仕方がない。
それをみていたら、ハンドくんにスプーンを渡された。
プリンの皿を近付けられて、プリンを掬って大きく開けて待っているさくらの口に入れる。
パクンと口に入れる度に笑顔になるさくら。
思わずオレまで笑顔になっていた。