第70話
ドリトスがさくらの額に手をあてて「熱は出ておらぬ」とセルヴァンに告げると、2人は安心して大きく息を吐く。
「ドリトス様?セルヴァン様?」
ハンドくんに塞がれていた口を開放されたヒナリが、2人に何かあるのかと問う。
2人は何度もさくらの熱を気にして、確認しては安堵する。
「さくらは元々熱を出しやすい。さくら本人は『小さい頃から』と言っておったんじゃ」
「それでも『寝てればそのうち治る』から『大したことではない』らしい」
「・・・・・・呼吸が乱れた時は酷い苦しみ方じゃった。無意識に握りしめたセルヴァンの手が『内出血』するくらいにな」
「あの時は寝たと言うより『気絶』に近かった」
「そんな・・・」
ヒナリはショックで言葉が出ない。
ヨルクも後頭部の痛みを忘れて呆然としている。
・・・ヨルクはハンドくんにハリセンを2発受けていたのだ。
ハリセンの前に『さくらの魔石』を使ってヨルクの周りに結界を張ったため、ハリセンの音は外にもれることもなかったが、呻く声をもらさないために今まで口を塞がれていたのだ。
そのため、セルヴァンの『モフモフ』に夢中なっていたさくらに気付かれることはなかった。
2人は眠っているさくらを凝視する。
身体にはハンドくんが『タオルケット』をかけていた。
今日はこのままここで寝るようだ。
「ドリトス様。セルヴァン様。・・・私もさくらを守りたい!」
「オレも」
「ヒナリもヨルクも『今のまま』で良い」
「でも・・・」
「『今のまま』・・・それはさくらが『さくららしく』過ごせるように努めることじゃ。それはそれで『難しい』が・・・2人にはそれが出来るかね?」
ヒナリとヨルクはお互いを見遣り、ドリトスとセルヴァンにまっすぐ向き直ると「「はい!」」と声を揃えた。




