第7話
さあ、女神様復活で魔法の講義です。
「期待されても困ります」
イエイエ。
『魔法の存在しない世界』で生きてきた私には、『魔法が使える』なんて未知の世界です。
小説やマンガの知識ですが、四元素と言われる『火』『水』『地』『風』に『光』『闇』の魔法があるとのことですが?
「そうですね。この世界の人たちは、四元素のうち1つと『生活魔法』が使えます」
他に『空間魔法』と言われる魔法があり、アイテムボックスを覚えたり、別の場所へ瞬間移動出来たりするらしい。
そして生活魔法とは基本的に家事で必要な魔法だけど、中級魔法になると旅で入浴出来ないときに身体や衣服の汚れを落として綺麗にしたり、濡れた衣服や髪を瞬時で乾かしたり出来るそうだ。
ただし『詠唱』付き。
だから、街中の辻とか公園周辺にいて、『生活魔法を有料でかける』仕事もあるらしい。
「それって酒場とかでやるとよくない?」と聞いたら下手な術士だと『酔いも覚ます』そうだ。
泥酔で周囲に迷惑かけるよりマシだと思うんだけど。
じゃあ『花街』とかの『色街』で香の匂いを付けたまま帰って、奥さんが『鬼化』するのを防いだり出来るんじゃない?
そう言ったら、この世界は一夫多妻制なんだそうだ。
そのため、そんな事を気にするのは新婚家庭と恐妻家だけらしい。
・・・リア充爆発しろ。
さて気を取り直して。
私が使える魔法とはどれなんでしょう?
「すべてです」
はい?
なんと言いました?
「どんな魔法でも使えますよ」
あらビックリ。
チートですか?
「貴女の世界にある『超能力』は分かりますね?」
手を使わずに物を動かしたり壊したり、空を飛んだり、心を読んだり、テレポートしたり・・・?
「はい。それを『詠唱』を唱えることで使えるようになるのが、『魔法』だと思って下さい」
詠唱は『何をどうしたら』発動するか、という順序を唱えているらしい。
でも、私は『具体的に思い浮かべる』だけで使えるそうだ。
それは、元の世界で得た知識があるかららしい。
そして発動した魔法に『好きな名前』を付けることで、魔法の登録が出来るとのこと。
その後は名前に魔力を込めれば発動出来るようだ。
じゃあ・・・
「アレ持ってきて」と指さしたら、透明な手首から先が『アレ』の上に現れて、まるで『コレ?』と確認するように指をさした。
「そう。それ」と言ったら、ヒョイとつかんで持ってきてくれた。
それを見て、アリスティアラが「あら?」と自身の髪を触りだした。
うん。さっきまでいた場所に落としてたんだよ。
『透明な手』から髪飾りを返されて、「ありがとう」とお礼を言う女神様。
それと同時に、目の前に『名前をつけますか?』と表示が出たので、『ハンドくん』と名付けた。
以前観たコメディ映画で、表情豊かな『ハンドくん』をみてから好きなキャラだったんだよね。
「ハンドくん。これからもよろしくね」と言ったら、『グッドサイン』をしたあと手を振ってポンッと消えた。
その後も指先の1センチ上で火を灯したり、キャンプファイヤーみたいに大きな火を起こしたり。
そよ風を呼んだり、火と風の共演で『渦を巻いた火柱』を何本も起こしたり(さすがに「やりすぎです」って怒られた)。
風を身にまとって空に浮かんだり、風で盾を作ったり。
飛ぶ練習のついでに隣の大きな無人島へ行き、そこで見つけた種から植物を芽吹かせたり、木々が密集し過ぎていたから風で伐採して陽の光が入るようにして、伐採した木材を使って二階建ての大きなログハウスを建てたり。
色々と島の改造をしながら使える魔法を増やしていたら、この島から『所有権』が贈られた。
メニュー画面に『島の所有者になりますか?』と表示された。
驚いてアリスティアラに聞いたら、島が私を所有者として認めたそうだ。
島の所有者になれば、『瞬間移動』で来ることが可能なんだそうだ。
そして『防火扉の向こう』と違い、この世界の人たちを連れてくることも出来るそうだ。
マンションは『別の世界のもの』で、この島は『この世界のもの』だからかな?
「この島、本当にもらってもいいの?」
「良いですよ。島に限らず、『所有者』がいる土地は豊かになり、土壌も改善されますから。所有権を贈られたら、遠慮なく受け取って下さい」
この島は入江や砂浜もあるし、丘や花畑もあるから『別荘』に良いかも。
「この島は『島の意思』で全体に結界が張られているため、入江に『魔獣』が入り込むこともないですよ。個人所有の島なら、不在時に許可のない者が入ることも出来ません」
おお!防犯もバッチリ!
という訳で、この世界に移住する前に無人島ゲットだぜ!
アリスティアラと相談して、エルハイゼン国へ向かうのは3日後になった。