第68話
部屋へ戻ったさくらたちは、早めの夕食を取ることにした。
今日の午前に『呪い』から解かれたさくらや、魔力を一番使ったヨルク、昨夜寝ずにさくらに付き添っていたヒナリを一秒でも早く、少しでも長く休ませるためだ。
『魔石』に魔力を注いでいたセルヴァンとドリトスだったが、彼らは屋上庭園でゆっくりしていたため魔力はだいぶ回復している。
「さくら〜。もう寝ようぜ」
「やーだーよー」
「さくら。まだ本調子ではないのよ」
「ねむくな〜い〜」
だからまだねないもーん。
さくらはまだ起きている気マンマン。
そんな3人の様子に、ドリトスとセルヴァンは顔を見合わせて苦笑する。
「さくら。もう一度屋上庭園へ行くぞ」
セルヴァンが「ヤッター」と喜んでいるさくらを抱き上げる。
それに驚いたのはヨルクとヒナリ。
セルヴァンの事だから無理矢理にでも寝かせると思っていたのだ。
セルヴァンが何をしようとしているのか気付いているドリトスもついて行く。
しかし2人が動こうとしない。
「ヨルクとヒナリは、ここで『お留守番』かね?」
2人は一瞬戸惑った表情を見せたが、「行く!」「行きます」とあとを追った。
「さくら」
「なあに?」
「『獣化』が見たいんだったな」
「見せてくれるの!」
「元気になったからな」
「わぁーい」と大喜びするさくら。
その後ろで「え?獣化?」と顔を見合わせているヨルクとヒナリ。
「女神様から『獣人は獣化出来る』と聞いたらしくてな。さくらは『見てみたい』そうじゃ」
「でも・・・何故『今』なんでしょう?」
「『今』だからじゃよ」
ドリトスの言葉が理解出来ない2人。
それでも喜んでいるさくらを見て、「さくらが楽しそうだから」と『親バカ』能力を発揮する。
言い方を変えるなら、『さくら至上主義』『さくらが一番』だろうか。
セルヴァンの腕の中で、目を輝かせているさくらを見ているだけで笑顔になってくる。
「セルヴァンのヤツー。オレの雛なのにー」
「さっき、抱っこを嫌がられたばかりでしょ」
ヒナリに『忘れたつもり』のキズをさらに深く抉られて、再び落ち込むヨルクだった。