第66話
「まさかと・・・ムグムグ」
屋上庭園へ入って来ると同時に声をかけてきたジタンを、瞬時にハンドくんが口を塞ぐ。
1人は『ハリセン』を手にしてジタンを『強迫』している。
ジタンは後頭部を両手で押さえて、涙目で何度も頷いた。
「何が『まさか』だったんだ?」
ハンドくんに口を塞がれた状態で、ヨルクたちのいる芝生へ誘導されたジタンは、ようやく口を塞がれた理由を理解した。
ハンドくんたちから手を離されて、大きく深呼吸するジタンに、ヨルクが小さめの声で聞く。
「ええ。実は屋上庭園に『金色の光』が集まっていまして。それでさくら様がいらっしゃられるのではないかと」
ガラス張りの周囲を見回しても、煌めいているのが陽光か『金色の光』なのか分からない。
さくらが寝ている今は窓を開けない方がいいだろう。
気紛れな妖精たちに、さくらを起こされては困る。
今はただ、眠ることでしか体力を回復出来ないさくらを、少しでも長く寝かせてあげたい。
・・・それに、ここにいる誰もがこの『幸せな時間』を壊したくないのだった。
「ン・・・」
久し振りによく寝た。
目が覚めても身体のダルさとかはあるが、それは体力が回復していないからだろう。
「よく眠れた?」
ヒナリの声が上から聞こえて、見上げるとヒナリが優しく見下ろしていた。
目を閉じてコテンとヒナリに寄りかかり「まだねんね〜」と甘えると、「もう。さくらったら」とクスクス笑い声が降ってくる。
それにつられて私もクスクス笑う。
「目を覚ましたか」
「具合はどうじゃ?」
セルヴァンとドリトスが寄ってきて、心配性のセルヴァンが私の額に手をあてる。
「柔らかで気持ちいい〜」
「・・・え?」
「コラコラ」
「その『具合』じゃない・・・」
「ドリトスはフカフカで〜。セルヴァンはモフモフなの〜」
苦笑のドリトスと呆れているセルヴァンだったが、それでも私の『評価』には笑っていた。
唯一ヒナリだけが、「もう!さくらったら!」と顔を真っ赤にすると、「『膝だっこ』の刑!」と言いながら笑顔で私をギューって抱きしめた。




