第61話
「さくら。オレからはコレだ」
ヨルクに呼ばれて振り向くと、ふわりと柔らかくて軽い、薄い青色の布を頭からかけられた。
軽すぎて、布の重さを感じない。
まるで伝説の『天の羽衣』だ。
「これなあに?」
「さくらを『陽の光』から守ってくれるものよ」
「ヨルクが言ってた『良いもん』ってコレのこと?」
「そっ」と笑いながら頷くヨルク。
鑑定では『翼族の羽衣』ってあるんだけど・・・
どう使うんだろ?
陽射しを避けるのなら、ヴェールみたいに頭からかけるのかな?
頭の上にかかってる『羽衣』を、窓から入る陽に透かせてみたりしたけどよく分からない。
そのうち羽衣に息を吹きかけるだけで、浮いたり揺れたりするのに気付いた。
私の弱い息でもフワリと浮かぶ。
だから面白くて夢中になっちゃったんだよね。
ああ。たんぽぽの綿毛に息を吹くとフワッと飛ぶカンジに似てる。
あの『ケセラン・パサラン』たちも、こんなフワフワだったな。
今度会ったら、一緒に遊びたいな〜。
そんな事を考えながら羽衣で遊ぶ私の様子を笑いながら見てたヨルクが、羽衣の上から私の頭を撫でた。
「よし!今から屋上庭園に行ってみるか」
「コラ!さくらに無理をさせるなと」
「大丈夫だって!口で説明するより実際使った方が早いだろ」
セルヴァンが止めるのを無視して、羽衣をヴェールのように頭から被ったままの私を抱き上げるヨルク。
「『年寄り』は口喧しくて困る」
「としより~?ダ~レ~?」
「セルヴァンだ」
「セルヴァン。『としより』なの~?」
「『セルヴァンじーさん』だ」
「『セルヴァンおじいちゃん』って呼ぶの~?」
「ヨルク!」とセルヴァンの怒る声が聞こえた。
ヒナリはハラハラしてヨルクとセルヴァンを見ているし、ドリトスは面白そうに笑っている。
「ヒナリ!置いてくぞ」
「置いてくぞー」
「ちょっとヨルク!さくらがマネするから変なこと言わないで!」
廊下に出る前にヒナリを呼ぶ。
私が面白がってヨルクをマネして遊んでいたら、ヒナリが慌てて追いかけてきた。