第6話
「私のレベルとかバレたらヤバくない?」
そう聞いたら、私には『公開ステータス』というのがあり、レベルや所有魔法などはそこで選択出来るらしい。
そういえば、私の名前は『空欄』だったな。
名前・・・日本で使っていた名前を、この世界では使いたくない。
あの名前は、私と『元の世界』を繋ぐ唯一のもの。
「ねぇ。名前なんだけど・・・『この世界用の名前』をつけていい?」
そう聞いたら黙って頷かれた。
多分、この女神様は『私の気持ち』に気付いているんだろう。
元の世界の・・・日本を思い出せるもので、名前にしてもおかしくないもの。
「さくら」
私がこのアリステイドで使う名前は『さくら』。
この世界に『私の家族』はいないから、『ファミリーネーム』は要らない。
小さめのステータス画面が表示されて、名前には『さくら』と表示されていた。レベルは1。
これが『公開ステータス』なんだろう。
そして大画面のステータスには『私の本名』と『生年月日』が表示されていたが、横に『非公開』となっていた。
うん。これは『この世界に必要ない』よね。
だって『私の記録』だから。
元の世界に生まれて生きてきた『紛れのない証』。
けっして忘れたくない『思い出』だから。
もちろん忘れる気はない。
名前は、思い出の詰まった『大切なたからもの』なんだから。
そして、人を操る時は『本名』が必要だと聞いたことがある。
だったら、この名前を隠すことで『操られる危険性』が回避出来るといいな。
ついでだから、公開ステータスの表示変更をしてみる。
アリスティアラの話では、普通に生活してる人たちの平均レベルは7前後だそうだ。
生活用の魔法を使ったり、勉強をしたり、薪割りなど仕事や手伝いをする事で、スキルを覚えたりレベルが上がるらしい。
小学生レベルの四則計算など算術の知識は、この世界では『中位スキル』らしい。
でも商人たちには必須スキルだそうだ。
確かに『計算出来ない商人』って笑える。
じゃあ。私は『一般人より高めのレベル』にしましょうか。
商人のレベルが13辺りだそうなので、私はレベルを10に設定。
『ほどほどに計算が出来る一般人』って位置付け。
メニューに『電卓』もあるし、面倒な計算式なら『検索バー』に打ち込めば良いみたい。
さっき『りんご5個で380円を6袋とミカン1箱880円を1箱買ったら全部でいくら?』と検索バーに聞いたら、別枠で『3,160円』と表示された。
『じゃありんごは何個買った?』と聞くと『30個』と表示。
これで、先の質問を継続で繋いで聞けることが分かった。
『検索バーに聞く』というのは、『検索バー』と思ったら枠にカーソルが点滅。
まるでパソコンみたい。
その状態で、質問を口に出さずに聞いただけ。
思念で動くからなのか、誤字脱字もなく打ち込めるようだ。
これならメモ帳やカレンダーでも、バンバン予定を打ち込めそうだ。
ちなみにこの世界は『1分60秒。1時間60分。1日24時間。ひと月30日。1年14ヶ月』で、メニュー画面のカレンダーや時計もこの世界仕様になっている。
私としては『1日に変更なし』って事が良かった。
毎日は日々を過ごしていけば良いが、1日の時間が長かったり短かったりっていうのは慣れるしかないからね。
アリスティアラの話だと、「1日の流れが同じだった『元の世界』から『聖なる乙女』を連れてきている」そうだ。
それは他の異世界でも同様だそうだ。
唯一『次元の穴』に落ちた場合は違うらしい。
『昼夜逆転』の世界だったり、『人間が家畜』だったり。
穴に落ちた人を助けにいく神もいれば、「これも運命」として助けない神もいるらしい。
元の世界の神様は、「迎えた人を大切にもてなす」事を条件で送り出しているらしい。
私のことも『仕方なく』送り出したため、私が『不自由な生活をしないように』と気にしている。
だから、私のワガママな『おねがい』も、すんなり聞き届けてくれたそうだ。
もちろん、アリスティアラを含めた『この世界の神様たち』も、私に悪いと思っているのは分かっている。
初日以降に熱を出して寝込んでいた私に、何人もの『人ではない気配を持つ、人の姿をしたダレカ』が、入れ替わり立ち替わり看病してくれたのを知っている。
アリスティアラに聞いたら、口ごもっていたから聞かないことにした。
そのため、私の代わりにお礼を伝えてもらった。
全員神様かと思っていたら、「精霊や精霊王も来ていた」らしい。
神様には直接会えなくても、精霊さんたちとはいつかお会いして直接お礼が言えたらいいな。
メモ帳に『やりたいこと』フォルダーを作って、書き込んでおいた。
「ねえねえ。『ユニット』にある『ステータス』は分かったんだけど、『服装』や『外見』ってなに?」
『ステータス』は、さっき弄っていたから『公開ステータス』を見たり変更出来るのと、公開ステータスが何種類も作れるから、いくつも作って切り替えが出来るのは分かった。
『服装』はセットしてる衣装を『一瞬で衣装チェンジ』出来るそうだ。
RPGでよくありますねぇ。
『銀仮面セット』とか『なりきりセット』とか。
あれみたいに、選択したら『セット衣装』を装着出来るって便利ですねぇ。
これも制限はないから、パジャマなどの着替えを全て登録しておきましょ。
単品を組み合わせることも出来るみたいだしね。
『早着替え』が出来ると、寝室に入ったら即パジャマ姿になれて、ベッドへダイブした瞬間に夢の中へGO!も可能だね。
でも・・・『元の世界』の服を着てても良いのかな?
「それは大丈夫です。ですがすぐに『異世界から来た』ことはバレますよ」
じゃあ。冒険の時は『この世界』の服を着た方が良いね。
『外見』は?と聞いたら、「見た目を変えることが出来る」そうだ。
つまり『完璧な日本人』の私が、『金髪碧眼の美少女』になることが出来る?
そう聞いたら「男性にもなれますよ」だって。
私は「異世界に慣れたら観光巡りをしたい」と言っているからね。
『女の一人旅』は色々と危ないらしいから、見た目を変えれば少しは『楽しい旅』が出来るだろう。
こちらも一瞬で変えることができるのだから、衣装チェンジとあわせて使えば問題はないだろう。
と思っていたら、私がレベルを一気に上げちゃったもんだから特に必要ないかも。
そう言われたけど、たぶん『男だから』とか『女のクセに』とかあるだろうから、観光旅行の時は役に立つんじゃないかな?