第58話
「何なんだよ。『これからのこと』って・・・」
ヨルクは腕の中で眠るヒナリとさくらに目をやる。
彼は神々が降臨したときから目を覚ましていた。
そして神々の話をすべて聞いていた。
彼が起きていることに気付いていたのは創造神だけだろう。
彼らは『呪い』に手を出せなかった。
出せば『さくら以外の人の生死』にかかわるからだ。
それでも『理』を破ってでも助けようとした女神がいる。
彼女はそれがさくらを苦しめると分かっていても、最後にはさくらを守るために手を出しただろう。
もうすぐ、消えてしまったかもしれない『さくらの生命』。
神々は、生命を消される前に『此処ではない何処か』にさくらを閉じ込めるつもりだったらしい。
・・・『閉鎖した世界』。
確かそう言っていた。
そこへさくらを連れ去られたら、二度と取り戻せない気がする。
何処であろうと、オレたちからさくらを引き離して『閉じ込める』ようなことは絶対させない。
たとえ相手が神であっても、さくらを絶対に守り抜く。
さくらは『呪いを受けたのが自分で良かった』と言っていたらしい。
なぜそのような考えが出来るのか。
日に何度も痛みから胸を押さえつけて、周りに心配を掛けないよう声を殺して、1人で苦しみ続けているのに。
そして『国家間の問題』に発展する危険があるからと、『呪い』のことを誰にも言わなかった。
『自分さえよければ』と考える者の多いこの世界とは違う、『自分より他人を優先する』考え方のさくら。
改めて『違う世界』から来たのだと思った。
・・・だったら、オレたちがさくらのことを見守り、さくらのことを最優先に考えていこう。
神の話だと、さくらに『呪い』をかけた連中やエルフ族には『天罰』が下ったらしい。
どんな天罰だろうと構わない。
二度とさくらが苦しまないなら『どうなろう』と関係ない。
呪いから解放されたさくらの頬は、『乙女の魔石』のように薄いピンク色をしている。
頬にキスをするとくすぐったそうに、でも嬉しそうに笑う。
そんなさくらを見て、自分まで笑顔になる。
きっと・・・
この気持ちが『シアワセ』なのだろう。




