第57話
「何が起きたか知りたいと言うから映像をみせたんだが・・・まさか、あれほど深く心に傷を負っていたとは思わなかった」
「それは私も同じです」
寝室には創造神とアリスティアラだけが残っていた。
「さくらには『乙女の魔石』の使い方を教えた方がいいだろう」
昨日はアリスティアラがさくらのアイテムボックス内にある『乙女の魔石』を使って、さくらの身を守った。
魔法でも結界は張れるが、魔石を使う方法もあるのだ。
特にさくらが精製する『乙女の魔石』は、聖なる乙女が生み出す『乙女の魔石』とははるかに違う。
聖なる乙女の魔石が『ルビー』なら、さくらの魔石は『ダイヤ』だ。
今まで乙女の魔石では1回が限度だった『通信』も、さくらの魔石なら『最低でも』3回は通信が出来る。
その『さくらの魔石』で結界を張れば、普通に『乙女の魔石』で結界を張るより強固だ。
昨日のエルフ族の攻撃程度なら、結界にキズをつけることも出来ないだろう。
「『これから』のこともある。あの賢い『さくらの魔法生物』にも使えるようにしておこう。彼らには申し訳ないことをした。さくらを助けに行こうとしたのを止めたのだから」
「いえ。彼らはちゃんとわかっています」
「彼らは『我らが助けに行く』と言い出す前に、さくらの周りに飛び出そうとしておった。それを若い神たちが遮ったのだ。『さくらに感謝されたい』『カッコイイところを見せたい』との欲望から・・・」
「・・・それは彼らが今まで後悔してきたからでしょう」
あの日・・・外出を止めたアリスティアラを遮って、この国の『次期国王』たちを使って外出させた。
その結果、さくらは『呪い』を受けて、今日まで長く苦しませてしまった。
確かにあの時は、暗殺集団の隊長の『目』を通して『呪い』をかけてくるとは思ってもいなかった。
助けに飛び出したのは『汚名返上』『名誉挽回』のつもりだったのだろう。
・・・それがさらに『さくらのココロにキズ』を負わせてしまった。
彼らはいま『罰』を受けている。
神でも『罰』は受けるのだ。
彼らはもう『神籍』ではない。
・・・『除籍』されたのだ。
『若い神だから』という理由で許されることは何ひとつ無い。
『神』である以上、言動に責任があるのだ。
「『新しき神々』は既に決まり、『彼ら』の霊には『シルシ』が付いておる。『役目』が済めばシルシを付けた時の姿で神格化する」
彼らは『それ相応』の功績を多数挙げている。
そして神々からも、満場一致で神と名を連ねる事が認められている。
この世界の神々は『信賞必罰』の意識が高いのだ。
・・・もちろん、本人達には『その事』は伝えられない。
『残りの一生』をムダにさせないためだ。
「さくらの『呪い』が解かれてすぐ、此度の『呪い』に加担した者たちと関係者にはすべて『天罰』は与えてある。エルフ族にもだ。これによって『聖なる乙女』の召喚が決まった。何れ、さくらは会うだろうが・・・だが、今は身体とココロを癒すことが最優先だ」
「はい。分かりました」
その言葉を最後に、室内は静かになった。




