第52話
「さくら~。また熱でたって~?」
「ヨル、ク?」
胸が苦しくて痛くて。
ベッドの中で胸を押さえてガマンをしていたら、ヨルクが入ってきた。
そのままベッドに腰掛けて、丸めている背中を撫でてくれる。
「よーしよし。大丈夫だ。すぐにラクになるからな~」
「どこ・・・行って、た、の?」
「ちょっと家へ。良いもん取ってきたからな~」
「ヒナリは?」
「隣の部屋で寝てる。ちょっと寝かせといてやろーな」
「ヨルクは?」
「ンー?」
「ヨルクは、寝なくていいの?」
「・・・そうだな。じゃあ、ちょっと待ってろ」
さくらの頭を撫でてから寝室を出たヨルクは、隣の部屋から眠っているヒナリを連れてきて、ベッド奥側の広い方に寝かせる。
ヒナリは寝ぼけ眼でさくらを見て、「もう大丈夫よ~」と言いながらさくらを抱きしめて目を閉じる。
そしてすぐ寝息が聞こえてきた。
ヨルクもさくらの背後に潜り込み、2人を抱きしめて目を閉じる。
さくらも2人の温もりに安心して目を閉じた。
苦しかった胸の痛みも、いつの間にか治まっていた。
「よく寝ておるな」
ジタンの執務室から戻ってきたら、ヨルクとヒナリが部屋におらず。
さくらの寝室を覗いたら、2人はさくらを抱きしめて一緒に寝ていた。
「ヒナリもヨルクもよく頑張ったな」
セルヴァンが2人の頭を撫でる。
一晩中、魘されては泣き叫んで目を覚ますさくらに付き添い続けた。
そのさくらは、今は精神的に疲れているのだろう。
顔色は悪いが、魘されることなく微笑んで眠っている。
「楽しい夢を見ておるのかのう」
「3人で空をとんでいらっしゃるのでしょうね」
さくらの寝顔を見て、ジタンは安心する。
今日も熱を出していると聞いて、心配で顔を見に来たのだ。
ヨルクの話だと、さくらの熱は『呪いに抵抗しているから』だという。
だったら僕は『自分の出来ること』をしましょう。
「それでは、僕はこのまま神殿に行ってきます」
「ああ。頼む」
預かった木箱を手に神殿に向かう。
ブレスレットに祝福を受けるため。
そして神に『呪いを解く方法』を教えて頂くために。




