第51話
オレがセリスロウの城に『お使い』に行ったのは、『悪意除け』のブレスレットを受け取るためだ。
ヒナリの父で翼族の族長エレアルに『悪意に弱い』さくらの相談をした。
そして聞いた。『呪い』を受けない、跳ね返すチカラはないかと。
話を聞いたエレアルは、すぐに手紙を認めて「これを持って城に行け」と言った。
城でセルヴァンの長男シルバラートと次男ソルビトールにエレアルからの手紙を渡したら、読後に持ってきたのが『セイジュのブレスレット』だった。
「呪いを払う『魔具』があるだろう。セリスロウから貰ってきたブレスレットは『悪意除け』だが、神殿の祝福を受ければ『呪い除け』が付加できるハズだ」
「ブレスレットは今どこに!」
「セルヴァンに渡してある」
「すぐに!」
飛び出そうとするジタンを引き止める。
「このことはまだ誰にも話していない。特にヒナリには聞かせたくない」
ヨルクの言葉を黙って聞いていたジタンは、大きく頷いた。
「分かりました。ここへドリトス様とセルヴァン様を呼んで下さい。私からお話します」
「オレのことは言うなよ」
「またですか・・・」
この幼なじみの翼族は、ジタンから見ても『賢者』の部類に入ると思う。
しかし本人はそれを極端に嫌う。
今回のように重要な話はジタンに話して、ジタンの手柄にすり替える。
『族長の娘の比翼』という立場にいるヨルクは、『ヒナリをたてる』ことしか考えない。
『翼族の族長』は長子が継いでいく。
それも『次期族長夫婦』が話し合って、夫婦のどちらかが族長を継ぐ。
ヨルクは、族長をヒナリに継がせたいと思っているのだ。
ヒナリは『族長の娘』としての立場が邪魔をして、自由な翼族の子供には珍しく自分を抑えて『良い子』として生きていた。
それはジタンから見ても『痛々しい』ほどに。
ヨルクは周囲からの、無責任すぎる『過度な期待』で潰されそうなヒナリを一番そばで見てきた。
そして『外の世界』へ連れ出した。
周りには『気紛れなヨルクに振り回される気の毒なヒナリ』と映っているだろう。
ヨルクの『思い』を知っているのは翼族の族長エレアル様と自分、そしてセルヴァン様とドリトス様くらいだろうか。
執務室の扉がノックされて、ドリトス様とセルヴァン様が入ってくる。
ソファに移ってヨルクから聞いた話を2人に話しましょう。
きっと2人は『誰の考え』か、言わなくても気付いてくれるでしょう。




