第48話
セルヴァンとドリトス様からさくらの話を聞いた。
ここへ来てから昨日までの3ヶ月のことを。
瘴気で善悪の判断力を失い、狂い始めていたジタンの父親たちのせいで遅々として進まない話し合い。
そして立て続けに起きた『魔物の浄化』と『天罰騒動』。
そしてその時の正確な対応と対策。
セリスロウ国のマヌイトアにいたオレたちも、セルヴァンからの連絡で『軽度の目眩と耳鳴り』だけで済んだ。
その後はずっとこの部屋と寝室で過ごしていて、ジタンの案内で王城内を見学しているときに起きた『さくら暗殺未遂事件』。
その時に向けられた『悪意』で高熱を出して寝込み、やっと起きられたと思ったら昨日の『飛空船事件』。
そして今もまた熱を出して寝込んでいる。
「なあ。なんでさくらが狙われないといけないんだ?」
「・・・さくらを手に入れれば、自分たちにも『神の加護のおこぼれ』が得られると思っている節がある。それも『最悪な方法』で、じゃ」
一部の者たちは、さくらを攫い『人質』にすることで、神々を『思い通りに出来る』と思っている。
実際、コーティリーン国は暴行で言うことを聞かせるようにジタンに言ってきた。
ジタンはあえて言わなかったが、「チカラずくで『襲ってでも』言うことを聞かせろ!」と言われていたのを、セルヴァンとドリトスは通信士から聞き出していた。
・・・あの気位の高いエルフ族にしては、珍しく程度の低い発言だ。
直後に下された『天罰』。
直接、さくらと関わったことのない通信士ですらエルフ族の言葉に腹を立てて、天罰で悲鳴をあげる通信の向こう側に「神様万歳!」と喜んでしまったそうだ。
この王城内では、さくらを支持する者があまりにも多い。
そして、彼らの決め事に『最上階へ上がらない』がある。
せめて最上階だけでもさくらが自由に動けるようにとの配慮だ。
ただ、さくら自身は寝込んでいて、自分で動き回ることは無かったが。
相手が天罰を下されるほど『悪い行為』を受けたのに、『天罰騒動』では対応を指示しただけでなく、たくさんの『乙女の魔石』を無償で提供された。
そのおかげで、数多くの人たちが救われることになった。
またジタンが指摘された『聖なる乙女への待遇』に対する意識改革も進んでいる。
『自分が見知らぬ土地で1人放り出されたら?』
それを今まで考えてこなかった『この世界』にとって大きな衝撃となっている。
さくらは、その後寝込んでしまったため、そのことは知らないだろう。




