第47話
「私がキライになったから、いなくなったのかなぁ?」
「・・・さくら?」
さくらを見ても寝息をたてて寝ているだけ。
昨日のハンドくんの説明だと、精神疲労は神様でも治せないと言っていた。
「なんで自分が『原因』になっているのよ」
「ヒナリ」
今のさくらにとって『ゆっくり眠る』のが良いことなんだけど。
・・・本音はさくらのそばにいたい。
でも、セルヴァン様に再度呼ばれて部屋を後にした。
「あ?さくらは?」
セルヴァン様に寝室から出され、隣の部屋でハンドくんが出してくれた朝食をセルヴァン様やドリトス様と一緒に頂いた。
美味しいハズなのに、さくらが心配で味がよく分からない・・・
そうして、さくらの心配以外に何もしないで時間を過ごしていた。
1時間ほど経った頃・・・ハンドくんがテラスのカギを開けたら、そこからヨルクが部屋に入ってきた。
「今までどこに行ってたの!」
ヒナリが今までの不安をぶつけるように、ヨルクを掴んで前後に揺さぶる。
「家だよ、家!コレ取りに行ってきた」
ヨルクが腰に付けているポーチから、薄い青色をした柔らかな布を取り出した。
セルヴァンやドリトスにもそれは見覚えがあった。
翼族の子供が必ず身につけているものだ。
「これって・・・」
「オレが貰ってほとんど使わなかったヤツ」
翼族は空をとぶ。
その分、陽の光を強く受ける。
子供にとって、強い陽の光は『害』にしかならない。
そんな子供にこの布を身につけさせることで、全身に受ける陽の光を『ゼロ』にまで抑えられる。
ヨルクは翼族には珍しく、陽の光に対して生まれつき『耐性』を持っていた。
そのため貰って1、2回使っただけでしまい込んでいた。
『陽の光』がさくらの身体に悪いと聞いて、この羽衣を思い出したのだ。
さくらが深く眠ったのを確認したヨルクは、そっと抜け出して家まで飛んで帰ったらしい。
「さくらが起きる前に戻るつもりだったんだよ」
それが「ちょっとついでに、セリスロウの城に『お使い』に行ってきてくれ」と手紙を頼まれて。
城でも「これを渡してほしい」と頼まれて。
「と言うわけで、コイツが頼まれたもんだ」
「ほらよ」とセルヴァンに『木箱』が手渡された。
セルヴァンが蓋を開けると、中には木製のブレスレットが一つ入っていた。
添えられた手紙には、『天罰騒動』での対応に感謝する旨が書かれていた。
「ほう。『セイジュ』のブレスレットか。『魔除け』『悪意除け』じゃな」
『悪意』に弱いさくらには最高のプレゼントだろう。