第434話
さくらたちが『作戦会議』をしている中、スゥたちは従者部屋で勉強中だった。
その様子を作戦会議の詳細待ちのジョシュアとジョアンナが見ていた。
「みんなは『作戦会議』に参加しないでもいいの?」
「はい。ご主人様と師匠の指示に間違いはありませんから」
「一度も?」
「はい。一度もありません。
間違えたのは、私自身です。
私が『自分で何でも出来る』と思い上がっていたのです。
そのため、妹を巻き込んで『許されない行動』を取りました。
改めて思い返しても、私はその場で・・・いえ。
もっと前に殺されていてもおかしくなかったのです。
広い心で許されていたことを、私は感謝もせず『当たり前』とか『これくらい当然』と思い、指示を受けていた戦闘も『これが実力』と傲り高ぶっていたのです。
私がこうして共闘を許されているのは、師匠や師範の指導とスゥの協力。
何より、ご主人様の優しさがあったからです」
「シーナもルーナも。
今は心を入れ替えて、本当の実力を手に入れた。
ご主人の希望は『受けた優しさと同等の優しさを別の相手に渡せ』です。
それが少しずつ広がれば、優しさが自分にまた返ってくる。
・・・私はご主人からその話を聞き、そしてあの時あなたたちに『ご主人と師匠から受けた優しさの一部』を渡したつもりでいます」
スゥがダンジョンで助けてくれた理由を改めて知ったジョシュアたちはバツが悪そうに俯いた。
「その事を責める気はありません。
ですが、本当に困っている方を見かけたら助けてあげてください」
「ええ。分かったわ。
私たちはまず、あのダンジョンで救われた感謝を返すわ」
「それだって、食事を分けて貰ったでしょ。
ダンジョンから助け出された事に、ダンジョンで共闘を許可してもらったこと」
「そして、私たちを受け入れてくれた、あなたたちへの感謝も、ね」
「はい。
私も、ご主人さまや師匠、師範から受けた恩が多すぎて返せていません。
そして、感謝も誰かに渡せていません」
「ルーナはベルに優しさを渡したよ。
解体の仕方を教えていたでしょう?」
「・・・あんな事でもいいのでしょうか?」
〖 ロンドベルは十分感謝しています。
ルーナ。『自分に出来ること』で誰かを助けるのが重要です。
以前、スゥと誓い合ったでしょう?
『正義の味方になる』と 〗
「ルーナ。これからも一緒に出来る事を増やして『正義の味方』になろうね」
「・・・うん。
一緒に『カッコイイ』を目指そうね」
スゥとルーナの様子が微笑ましく、3人の頬が緩む。
この笑顔を曇らせたことを後悔している3人は心で誓う。
『誰かに優しく出来る』ことは、心に余裕を生む。
思い返せば、心に余裕がなかった。
だからこそ、向けられた優しさをまっすぐに受けられなかった。
『心に余裕を持つために。
優しさを誰かに向けられるように。
そして、2人の笑顔が続いていくように。
そのために、心を鍛えよう』
そう、各々の心に強く誓った。




