表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
415/449

第415話


その日のハンドくんたちは忙しかった。

さくらに絡んだバカモノたちが町を追い出されると、すぐに回収してダンジョンの中に投げ込んだ。

場所は『300階層ダンジョン』のトラップの中だ。


〖 女たちの『代わり』が見つかりました。

今度はイキがいいですよ。

これで少しはダンジョンの瘴気が薄まって魔物たちが弱くなるでしょう。

それとも。瘴気が完全に薄まるまであの女たちをそのままにして、新たに男たちを投げ込みましょうか。

その方が効果的ですよね 〗


「ハンドくん。女性たちは解放してあげなさい」


〖 解放するんですか?

せっかく瘴気を薄めるのに役立っているのに。

そんな事しか役に立たないクセに。

ああ。さくらに再び手を出してきたら、終身雇用で働いてもらいましょう 〗


「ハンドくん・・・」


〖 おや?何か問題でも?

ちゃんと言われた通りに解放してあげるんです。

それでも懲りずにさくらに付きまとって手を出すようなら、手加減は必要ないですよねえ? 〗


たしかにハンドくんのいう通りだろう。

一度は許された罪を重ねれば罰が重くなる。

それは『この世界の(ことわり)』だ。

ならば、彼女たちも『ヒナルク(さくら)を追い回す』という、さくらの世界では『ストーキング』と呼ばれる犯罪を重ねれば処罰されても当然だろう。


「しかし・・・『終身雇用(死ぬまで働かせる)』というのは重すぎないか?」


〖 大丈夫です。

連中と同じように『さくらのジャマをするバカモノ』が現れて仲間が増えれば、ダンジョン内に溜まりに溜まって()もりに()もった瘴気が早く薄まります。

そうなれば、解放も早まるでしょう。

それに、あのトラップ内は『時間無制限』です。

つまり『反省などしない』でしょう。

『再犯率100%』ですね 〗


ハンドくんがあっさり解放を許したのも『それが理由』だからだろう。



そして、トラップ内に『さくらにカネを強請(ゆす)った者たち』のために作られた『回転舞台』が姿を現した。

「その生命をよこせー」と背後から現れる多数の魔物たち。

どんなに強くても、倒しても倒しても現れる魔物に彼らはとうとう『戦いを放棄(敵前逃亡)』した。

魔物(それ)らから逃げるために走り出した。

彼らは気がついたら単調なレンガで出来た壁のダンジョン内の通路にいた。


「どこかのダンジョンに入ろう」


最低限の武器と防具、わずかなアイテムだけ返されてジュスタールの町を追放(追い出)された。

アイテムボックスも奪われたため、手荷物が多くなれば身動きが出来ない。

ただ、お金も慰謝料として奪われた。

無銭のために何も食べられずに、空腹のままだった。

牢屋内での食事は所持金から支払われる。

それを慰謝料として全額奪われたのだ。


『銀板相手に手を出した』


その事実は間違いではなく、『奴隷になるくらいなら』手放してもなんとかなるだろう。

『別の連中から奪えばいい』のだから。

・・・発想自体がすでに『破落戸(ならずもの)』だった。

その空腹を満たすため『とりあえず自分たちで食材を()ろう』と話が決まったのだ。

・・・そこまでは覚えていた。

だからこそ、ダンジョン内にいることも気にならなかった。

空腹で記憶が飛んだだけと考えていたのだ。


そのため、彼らの注意は周囲へ向けられることはなかった。

どんなに走っても魔物との距離は広がらず、かと言って(せば)まることもなく、一定の距離を(たも)ち続けていることを。

両側の壁がどこまでもまっすぐで、わき道もなかった。

・・・そう『単調すぎた』


床に敷かれた灰色のレンガも。

だからこそ気付かなかった。

『床と壁が連動しているだけ』だということを。


走り続ける彼らが立ち止まるのは、瘴気が薄まるのが先か。

生命が尽きるのが先か。


しかし、彼らがダンジョンより解放されたとしても、その時は行方知れずになってから10年以上は経っており、恐怖から白髪になり実年齢より老けて見えるのだろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ